2009 年 29 巻 3 号 p. 321-327
前頭葉,とくに前頭前野は最大の連合皮質であることから,そこで生じる症状は機能領域特異的ではなく機能領域横断的な特徴を有し,機能領域に共通の障害の形式として捉えるべきものである。筆者は前頭葉 (前頭葉穹窿部) 症状として,セットの転換の障害,ステレオタイプの抑制の障害,複数の情報の組織化の障害,流暢性の障害,言語による行為の制御の障害という,5 つの障害の形式とを区別してきた。各障害の形式とその神経心理学的検査法を紹介した。また前頭前野 (左外側穹窿部) 梗塞例の発症11 年後の強迫様症状が,セットの転換障害と複数の情報の組織化の障害から解釈しうることを述べ,それが“ひとつの基準への固執”という,より共通の障害として表現しうると考えた。