高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム I : 前頭葉損傷による高次脳機能障害の全人的認知リハビリテーション
支援や対応に苦慮した 4 例の経験から (集団の場の利用という視点も含めて)
先崎 章
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2012 年 32 巻 3 号 p. 367-374

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抄録

神経心理学的検査では査定しにくい前頭葉症状を呈し, 支援や対応に苦慮した 4 例をあげ, 集団の場を利用した全人的認知リハビリテーション介入を提示した。「症例 1」左前頭葉挫傷後に情動障害, 過度の正義感, 「収束的思考力の低下」を認めた例では, 標語を利用し, 心理グループ活動, 集団体育で「これから良くなるための行動」を点検しながら行動する学習がなされた。「症例 2」右前頭葉腫瘍摘出後に目的をもった行動の欠如, 行動の帰結に無頓着, 行為の開始や持続・制御の障害, 「拡散的思考の低下」を認めた例では, 集団体育で目的や目標を持って行動する練習が効果あった。「症例3」両側前頭葉挫傷後に重度の「無気力症」が持続した例では, 授産施設と地域活動支援センターへの通所が効果あった。「症例4」低酸素脳症後に記憶障害, 被害的な構え, 「情動の洪水」がみられた例では, 安心できる集団の環境下での練習により, 社会的な活動範囲が広がった。治療的な集団の場を利用した介入が, 人間的な生活への復帰につながったと考えたい。

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© 2012 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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