抄録
左半球の下前頭回弁蓋部・三角部(Brodmann44, 45 野)を中心としたいわゆる Broca 野は言語生成の中枢とみなされてきた。その一方で, 近年では Broca 野が行為の観察, 実行, 模倣に関与することが示されつつある。それにも関わらず, Broca 野の病変により行為機能が障害される(=失行が生じる)という報告は少ない。最近我々は, Broca 野を共通病変として有する症例 4 例(梗塞 3 例, 腫瘍 1 例)について失行検査を行い, その症状について検討した結果を発表した(Tsuruya ら2013)。本論文では, この論文について解説し, Broca 野病変で観念運動性失行が生じることを示し, ノンバールコミュニケーションにおけるBroca 野の意義を確認した。さらに, Broca 野が社会的認知機能と関連する可能性についても述べた。