高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム I : 失語症の実態と治療戦略
コミュニケーション障害の視点から
丹治 和世
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2015 年 35 巻 2 号 p. 183-189

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抄録

  失語症は頻度の高い症候であり病型の分類も確立しているが, 症状には著明な個人差があり, 環境や状況によって症状は変化するため, 個々の症例の症状を包括的に理解するのはけして容易ではない。評価に際しては, 標準的な言語機能の検査のみならず, 社会生活での実質的なコミュニケーション能力評価を盛り込むことが望ましい。今回の検討では,集団療法において, 分類上は全失語の失語症者でみられた豊かなコミュニケーションの特徴を分析した。その結果, 障害されているのは音韻処理全般であり, もっぱら特定の記号過程 (インデックス) を用いてコミュニケーションを行っていることが判明した。集団療法は,実用的なコミュニケーション能力を評価・訓練するための貴重な機会となるのみならず,それ自体が社会生活に参加する貴重な機会であり, 失語症者の抱える心理社会的な問題に対する有効な対応策と考えられた。

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© 2015 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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