高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
立方体模写課題 (CCT) と重なった五角形模写課題 (PCT) における成否の乖離に関する検討
鈴木 則夫翁 朋子
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2019 年 39 巻 3 号 p. 356-363

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抄録

  認知症の構成障害評価に多用される立方体模写課題 (CCT) と重なった五角形模写課題 (PCT) は, 時にその成否が二重に乖離する。成否が一致しなかった症例の偏りに疾患ごとに何らかの傾向がみられるか否かを検討した。対象 672 例中, CCT, PCT ともにできた者は 404 例 (60.1% ) , ともにできなかった者は 103 例 (15.3% ) , CCT ができ PCT ができなかった者は 50 例 (7.4% ) , PCT ができ CCT ができなかった者は 115 例 (17.1% ) だった。2 つの課題が乖離する例において, 脳血管性認知症 (VaD) と前頭側頭葉変性症 (FTLD) では PCT ができ CCT ができない者が有意に多かったが, アルツハイマー病 (AD) とレビー小体病 (DLB) では有意な偏りを示さなかった。CCT は注意や遂行機能の影響を受け, 前頭葉の機能低下によってもできなくなることが考えられた。PCT は CCT と比べて前頭葉機能低下の影響をあまり受けずに頭頂葉機能低下としての構成障害を検出し, AD や DLB を他疾患から鑑別するのに役立つ可能性があるが, 強い天井効果が認められ, 採点法など解釈の工夫が必要と考えられた。

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© 2019 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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