高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
脳出血後に再発した吃音が上肢運動麻痺に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS) 治療により改善した一例
藤森 禎子中村 淳片井 聡
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2019 年 39 巻 3 号 p. 348-355

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抄録

  症例は 60 歳代男性。学生時代まで軽度吃音があり自然治癒していた。50 歳代の左前頭頭頂葉皮質下出血後, 軽度右片麻痺と健忘失語が残存した。その 10 年後に右視床出血を再発し吃音が出現した。翌年, 発話速度抑制やマスキング, 遅延聴覚フィードバックと周波数変換フィードバックを行ったが効果の持続や般化は認められなかった。右手指動作改善を目的に低頻度反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS) を行った後, 自発話における吃音症状は軽減した。本例は右視床出血後, 運動ループ中の発話制御機能が障害され, 右運動野が過活動となり, 発話に関する半球間の協調的活動が崩れ, 吃音が再発したと考えられた。低頻度 rTMS は非病変側の過活動を抑制し, 病変側を活性化させる効果があるとされる。本例は右脳の発声発語運動領域に近い手指運動領域に rTMS が行われ, 右運動野の過活動が抑制された結果, 両半球の協調的活動の修復とともに吃音も改善したと考えられた。

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© 2019 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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