高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム 2 : 大脳機能の左右差から解く認知症の症候学
新皮質型アルツハイマー病 : logopenic progressive aphasia と posterior cortical atrophy
成田 渉
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2020 年 40 巻 2 号 p. 171-180

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抄録

  認知症性疾患として最多を占めるアルツハイマー病には記憶障害を主症状としない一群が存在する。 このうち, logopenic progressive aphasia (LPA) は左半球の機能低下を反映し, 喚語困難に加え, 句や文の復唱障害として表現される言語性短期記憶の障害を特徴とする。Posterior cortical atrophy (PCA) は後頭葉から頭頂葉および後頭葉から側頭葉の機能低下によって視空間認知障害, 対象認知の障害などを生じる。
  片側の障害が多い脳血管障害と比較して, 左右差があっても基本的に両側性障害である神経変性疾患では両側の大脳半球損傷でみられる症状を認めやすい。視空間認知機能の側性化は言語機能に比べて弱く, 同時失認のように両側性の障害で顕在化する症状は, 神経変性疾患では比較的生じやすくなる。脳血管障害では検討の場面が限られていた認知機能の側性化について, 神経変性疾患の症状は新たな検討の機会を与えるものになると考えられる。

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© 2020 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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