高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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シンポジウム 2 : 大脳機能の左右差から解く認知症の症候学
前頭側頭葉変性症 : 意味記憶と行動の左右差
品川 俊一郎
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2020 年 40 巻 2 号 p. 181-186

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抄録

  前頭側頭葉変性症は前頭葉および側頭葉前方部に病変の首座がある変性疾患群である。大脳の側性化については主に大脳後方の機能である記号的操作や視空間的操作の文脈で語られることが多いが, 前頭側頭葉変性症でも左右差は認められる。意味性認知症では側頭葉前方部が損傷を受け, 進行性の意味記憶障害を主徴とする。左側優位例では病初期から聴理解と呼称の障害, 表層失読が目立つ。一方で右側優位例では相貌失認が出現することが知られるが, 全ての例で出現するわけではなく, 前頭葉症状に類似した行動障害を呈する例も多い。右側頭葉優位例の疾患概念は整理が必要である。前頭葉が主に損傷をうける行動型前頭側頭型認知症は脱抑制, 自発性低下, 共感性の欠如, 常同行動, 食行動変化, 遂行機能障害などを症状とする。これまでの研究からは行動変容は右半球, 特に腹側の損傷の影響が大きいという right hemisphere hypothesis が提唱されているが, 一方で半球間の連絡が重要との報告もある。今後はさらなる神経病理研究やネットワーク研究が進むことにより, 単純な局在論以上の意味記憶や行動変容の神経基盤が明らかになることが期待される。

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© 2020 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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