高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
深層失語から音韻失語に移行した 1 例
大森 智裕浦野 雅世石川 芽衣三村 將
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2023 年 43 巻 1 号 p. 23-32

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抄録

  深層失語から音韻失語へ移行した症例を報告した。症例は 70 歳代前半, 女性。左三叉神経鞘腫に対する開頭腫瘍摘出術施行後に脳梗塞を発症し, 特徴的な復唱障害を呈した。発症当初は復唱時に意味性錯語を呈したが, 発症 20 ヵ月時点では意味性錯語が消失し, 低心像語の復唱において形式性錯語のほか, 音韻性の誤りを呈した。両時点において, 復唱での語彙性効果および心像性効果を共通して認めたことから, 本例は深層失語から音韻失語への移行例と考えられた。本例が深層失語から音韻失語へ移行した主な要因として, 音韻入出力双方 (音韻入出力変換, 聴覚入力辞書, 音韻出力配列) および語義理解の障害程度による差が影響したものと想定された。

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© 2023 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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