深層失語から音韻失語へ移行した症例を報告した。症例は 70 歳代前半, 女性。左三叉神経鞘腫に対する開頭腫瘍摘出術施行後に脳梗塞を発症し, 特徴的な復唱障害を呈した。発症当初は復唱時に意味性錯語を呈したが, 発症 20 ヵ月時点では意味性錯語が消失し, 低心像語の復唱において形式性錯語のほか, 音韻性の誤りを呈した。両時点において, 復唱での語彙性効果および心像性効果を共通して認めたことから, 本例は深層失語から音韻失語への移行例と考えられた。本例が深層失語から音韻失語へ移行した主な要因として, 音韻入出力双方 (音韻入出力変換, 聴覚入力辞書, 音韻出力配列) および語義理解の障害程度による差が影響したものと想定された。