2023 年 43 巻 2 号 p. 172-176
前頭葉眼窩部 / 腹内側部による損傷後には, 脱抑制行動などの行動変化に加えて自発性作話が生じることが少なくない。なぜこの 2 つの異なる症状が併存するのであろうか。本論ではこの謎に迫るため, 前頭葉眼窩部 / 腹内側部の機能を, 価値の付与や価値判断, 意思決定, 現実の状況のモニタリングや状況判断といった観点で検討した。この観点から考えると, 前頭葉眼窩部 / 腹内側部による損傷後の行動変化と自発性作話の両者とも, 価値判断や状況判断の困難さに加えて, 現実に合わない発言や不適切な行動の制御が困難であることから説明できる可能性がある。