2015 年 2015 巻 25 号 p. 131-135
検閲制度をジェンダー論的な観点から批評的に考察した研究についての報告である.近代日本においては,表記の一部を○や×に置き換える伏字が検閲の制度として採られていた.占領期にこの制度はGHQ/SCAP(連合軍総司令部)によって禁止されたが,現在の日本語のなかにも伏字的光景は残存している.検閲における二つの柱は,性的禁止と政治的な禁止であるが,そのイメージの構成からは,伏字自体がジェンダー化されていることがわかる.すなわち,検閲制度はマイノリティをジェンダー化する政治学を備えていたのである.