2015 年 2015 巻 25 号 p. 314-318
平安貴族女性の正装である裳唐衣装束は袴,単,袿,表着,唐衣,裳などから構成されている.その中で今回は,袿と衵の着用について着用実態の若干の整理と用例の分析を行った.
袿と衵を辞書で確認すると区別は,袿は裾の長いもので女性用のものとし,衵は裾の短いもので男性や幼童用のものとされている.しかし王朝物語を確認すると,袿の着用者にも男性はおり,同様に衵の着用者にも女性は見られる.また被物として使われることが多く,これは男女ともに贈られていた.また有職故実書で書かれていた説明も矛盾しているものも多く,実際の形状・着用について不明なことが多い.そのことを受けてか,現代の辞典類や注釈書類類の説明も曖昧なところが多くなっている.この研究の目的は,文学作品と古記録における用例の分析を行って,「衵」の着用実態の若干の整理と検討をしていくことである.
なお,今回は特に男性の着用について検討を行う.そのため,童と僧侶の着用の用例は除いた.