人間生活文化研究
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報告
大妻女子大学博物館所蔵の手芸裁縫作品調査報告(1)
中川 麻子
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2016 年 2016 巻 26 号 p. 22-30

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抄録

 明治時代初期から開始された日本の初期女子教育では,手芸と裁縫に関する教育が重要視された. 大妻女子大学は,大妻コタカによって明治41年に手芸と裁縫を教授する私塾として始まり,現在までその伝統が受け継がれてきた. 本稿では,大妻における手芸裁縫教育の詳細を明らかにすることを目的として,大妻女子大学博物館所蔵の手芸裁縫作品のうち,筆者が平成26年11月〜12月に調査した267点について報告した. 調査の結果, 所蔵作品は「手芸作品」,「裁縫雛形」,「その他」の3項目に分けられ,さらに手芸作品は12の手芸技法によって分類できた.

 大妻コタカの著作類と照合したところ,昭和2〜5年頃の出版物掲載の作品と類似するものが多かった. 作品形式や技法などから,今回の調査対象である手芸裁縫作品は,大正時代末期から昭和10年ごろ制作されたものであることが明らかとなった. また調査した作品の大半がレース類であり,テーブルクロスなどの実用的な作品が多いこと,課題作品の内容から,大妻では合理的に学べるようカリキュラムが工夫されていたことがわかった. 本研究から,大妻女子大学所蔵の手芸裁縫作品は,大正時代末期から昭和10年頃までの大妻の手芸教育の内容を伝える重要な資料であることが明らかとなった.

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© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
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