人間生活文化研究
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医療領域における臨床心理実習の多面的評価方法に関する研究
古田 雅明加藤 佑昌森本 麻穂
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2016 年 2016 巻 26 号 p. 31-36

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抄録

 本研究の目的は,心理臨床家養成のコア科目である臨床心理実習のルーブリック評価法を構築することである.具体的には,大学院の実習生と医療機関の実地指導者と大学院教員の3者間で何を実習の到達目標とするかを専門スキルの水準で評価する多面的な評価法の構築を目指す.

 本稿では,一連の研究の第一段階として,病院実習に対して実際に教員が行なっている指導内容をテキストマイニングにより明確化することとした.分析対象のデータは2つの学外医療機関における院生6名の計130回分の実習記録に対する教員Aのコメントであった.クラスター分析の結果,教員Aが院生に対し共通して行っている指導内容を見出した.それらは,①病院臨床心理士や医療スタッフの患者さんへの関わりの理解,②患者さんとの交流の記述と理解,③心理検査を病院で活かす方法の3点であった.また,対応分析の結果を見ると,この教員は実習先と院生の個別性に応じたコメントをしており具体的には病棟体験がやや多い病院の院生には患者さんとの交流の意味を考えさせたり,院生の関心に応じて自己理解を促したりするなど,コメントの内容を変化させていた.

 今後は,調査対象を広げるとともに,院生の実習記録と教員のコメントとの対応関係についても検討する必要があろう.

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© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
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