近年,人の心に関わる臨床心理士は医療・福祉・教育・司法・産業など様々な現場において幅広く活躍している.本研究では臨床心理士訓練途中である大学院生と大学院を修了して数年の臨床経験を経たカウンセラーを対象とし,カウンセリング場面における初心者カウンセラーの特徴を抽出し,それらがどのように作用しているのかを検討した.そして大学院を修了したカウンセラーの特徴を抽出し,初心者カウンセラーとの違いを探索的に検討し,それらの違いを明らかにすることで,臨床心理士養成教育へ提言することを目的とした.その結果,大学院生はクライエントの問題を十分に理解していない,うまく対応できていないと感じていた.また,「自分がカウンセラーとして技量を試されているようなプレッシャー」「中断の恐怖」を感じていた.そして,「今後カウンセラーとして働いていく上で適性が脅かされる不安」が明らかとなり,クライエント,指導教員の期待に応えていない葛藤の背景に,より根本的な適性不安があることが示唆された.しかし,大学院を修了したカウンセラーには大学院生に見られたような特徴は見られなかった.これらのことから,大学院生には「誰に何を期待され,自分自身は何を期待しているのかを考えさせる機会を持たせる」などの「型」への固執を引き起こす要因への配慮なり対策が講じられなければ根本的な解決にはならないことが示唆された.