2017 年 2017 巻 27 号 p. 121-133
まず,崇徳院の『久安百首』春部末尾の独自性を指摘した.次に四季部を中心に彼の和歌の特徴的要素を“和歌の用語と手段”の面から3点,“和歌の方向性(心の在処)”の面から5点を指摘し,後者の要素は連環する崇徳院の心の世界を示すと考えた.次に恋部は,恋の進行に従った構成に,和漢の知識に拠る恋歌を添えたとした.一般的恋歌から外れた身勝手さや,強引さ,あるいは卑屈さの裏にある孤独などが読み取れるとした.恋の進行の末尾歌を俊成が改訂した本文が『百人一首』に入ったとした.