人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
ISSN-L : 2187-1930
原著論文
近代のボストン美術館に見る日中米文化交流について
―岡倉天心,長尾雨山そして呉昌碩の貢献―
松村 茂樹
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2017 年 2017 巻 27 号 p. 603-609

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抄録

ボストン美術館東洋美術展示場に掛けられている呉昌碩「与古為徒」扁額は,同美術館中国・日本美術部長であった岡倉天心が呉昌碩に依頼したものと考えられて来たが,実は,天心の友人で,当時上海在住の漢学者・長尾雨山が,隣人関係にあった呉昌碩に揮毫を依頼し,黒漆木額に仕立ててボストンの天心宛に送ったものである.この頃,雨山は,天心より,ボストン美術館鑑査委員を委嘱されており,その就任記念に,この扁額を贈ったと筆者は考えている.天心のボストン美術館における活動は高く評価されているが,その背景に呉昌碩と交流した雨山という中国の正統的学問を受け継ぐ学者の協力があったことは,これまでほとんど指摘されていない.本稿は,これを分析し,近代において画期的成果を収めた日・中・米文化交流の意義を明らかにすることを目的とする.

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© 2017 大妻女子大学人間生活文化研究所
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