人間生活文化研究
Online ISSN : 2187-1930
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2017 巻, 27 号
選択された号の論文の55件中1~50を表示しています
原著論文
  • ―身頃部分の検討―
    土肥 麻佐子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 26-32
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/12
    ジャーナル フリー

    既製服を簡便にカスタマイズするシステムの開発を目指して,人が着装した衣服をモデル化することを目標とする.第一段階として,人が着装した衣服の身頃部分をモデル化するための方法を検討した.20~35歳の成人女性55名の人体3次元形状データの体幹部上半身を切り出し,身頃部分の凸閉包形状を生成した.次いでランドマークに基づいて相同モデルを生成し,左右対称の身頃モデルに変換した.55体の身頃モデルを主成分分析した結果,「肥り-痩せ」,「身体の厚い-薄い」,「いかり肩で反身傾向-なで肩で屈身傾向」,「乳房の大きさとバストラインからウエストラインにかけての身体の傾斜」,「前肩-後肩」の5つの主成分軸で衣服の身頃部分の形態特徴を説明することができた.いずれも衣服パターン補正のポイントとなる要因である.さらに身頃モデルのメッシュを布目にあわせて修正することにより,人が着装した密着型の衣服の身頃部分をモデル化できることがわかった.

  • ―ボクシングとヨガを取り入れた運動プログラムの場合―
    早川 洋子, 大熊 慶, 高橋 裕子, 内海 舞香
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 39-46
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,ボクシングエクササイズ(BE)とヨガエクササイズ(YE)の実施が気分(POMS)に対してどのような急性の心理的影響をもたらすかを明らかにすることを目的として実施した.対象者は,T市立体育館のフィットネスプログラムであるBEプログラムもしくはYEを取り入れたプログラムのいずれかの教室に自主的に参加している中年女性40名(各プログラム20名)であった.両教室ともに各運動プログラムを60分間実施した.対象者の気分については,1回の教室の運動実施の前後において,短縮版のProfile of Mood States(POMS)を用いて評価を行った.すなわち,各運動プログラムの気分に対する急性の影響については,POMSの(「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「敵意」「活気」「疲労」「混乱」)6つの各下位尺度の運動前後の値についてWilcoxon検定による群内比較を行った.群間の気分の変化の違いについては,各下位尺度について,運動前から運動後の変化量を目的変数,各運動プログラム群を説明変数,運動前の値,年齢,BMIを共変量とした共分散分析を行った.その結果,BE群の運動前後の気分については,「緊張-不安」,「抑うつ-落ち込み」の下位尺度において有意なポジティブな変化が認められたが,その他の項目には有意差を認めなかった.一方,YE群の運動前後の気分については,「緊張-不安」,「抑うつ-落ち込み」,「怒り-敵意」,「活気」,「混乱」において有意なポジティブな変化が認められた.また,BE群とYE群の気分の変化の違いについて検討した結果,「怒り-敵意」のみに有意な差が認められ,BE群でネガティブな変化であったのに対して,YE群ではポジティブな変化が認められた.以上のことから,運動様式(動的,静的)の異なる2つの運動プログラムは共に中年女性の気分に急性の変化をもたらすが,その変化の内容は運動強度や運動様式により異なることが示唆された.

  • 舘井 菖
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 319-336
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

    近年,聴覚障害者を言語的少数者である「ろう者」と表現し,彼らの文化体系に関する研究が盛んに行われている.しかし,途上国では医療モデルが根強く残り,ろう文化研究がほとんど行われていない.そこで本研究ではインドの学校を対象として,ろう教育が急激な変化を遂げる中,ろう者の間でどのような文化が見いだされるか明らかにすることを目的とする.
    対象地域はデリーとダージリンとし,参与観察法を用いた.学校種は「ろう児が複数人在籍している」という条件に該当する学校を選出した.基本的には生徒と教員のやり取りを観察していたが,必要に応じて聞き取り調査を行った.観察したデータの中で,ろう者と聴者との交流で顕著に見られた特徴や,ろう者同士の特有のやり取りが見られたものを抽出し,それらを「ろう文化」と捉えた.
    フィールド調査の結果,①学校において少数の教員が多数の生徒を支配し,管理する状態,②聴者とろう者の相互作用,③ろう児が築く遊びの世界が見られ,④徹底した口話教育が行われた学校においては,ろう児集団における相互作用が見られないことが分かった.また,口話教育を経験した成人の語りから,彼らの帰属集団の不明確さが明らかになった.
    調査の結果から,多くの学校において口話主義が支配的になっていることが分かった.聴者がろう者に対して,直接的な権力よりも,権力関係を維持するイデオロギーを発展させることによって,支配を広げている点が植民地主義と類似している.また,聴能主義下では,ろう児集団の相互作用が形成されにくく,成人後も帰属集団が曖昧になることが分かった.早期からの帰属集団の確立が必要とされるとともに,従来の「ろう者」の概念には括られない,多様なろう者の存在を認めることによって,ろう文化をまた新たな視点から捉えることができる.
    今回の調査では,調査期間の短さや言語上の障壁から,ろう者へのインタビュー調査が不十分だった点が課題となった.そのため,今後の研究においては,インド手話を習熟した上で,より長期的な期間で,インタビューを中心とした質的な調査をさらに重ねることが求められる.

  • 井上 源喜, 川野 田實夫
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 559-573
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

    大分県日田市地域の筑後川(三隈川)水系における泡状物質の成因を明らかにするために,泡状物質中のバイオマーカーの炭化水素,脂肪酸およびステロールの分析を行った.非環式炭化水素は奇数炭素優位のn-アルカン(C15~C35)および未同定の分岐アルカンが卓越し,少量のイソプレノイドアルカンが存在する.また,熱変性を受けたトリテルパンやステランがUCMH (unresolved complex mixture of hydrocarbons)とともに検出された.脂肪酸は短鎖n-アルカノイック酸(C12~C19)が多く含まれ,少量の長鎖n-アルカノイック酸(C20~C30)と分岐脂肪酸(イソ-,アンチイソ-C13~C17)が存在する.ステロールはコレステロールが主成分である.これらの特徴より,泡状物質中の有機物は珪藻を含むプランクトンなどの藻類起源の寄与が大きく,陸上植物や水生植物等の維管束植物および真正バクテリアの寄与は小さい.昆虫のユスリカChironomidaeなどのサナギが分岐アルカンの起源と考えられる.また,重油,潤滑油やアスファルトなどの石油関連物質やこれらの燃焼生成物が泡状物質の生成や安定性に寄与している可能性がある.

  • 古市 孝義
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 574-591
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,特別養護老人ホームにおいて介護記録の勉強会を行うことで介護福祉士の記録への意識や実践における活用の変化が表れるかを明らかにするために行った.研究者主体で勉強会を行い,勉強会前後には半構造化面接による介護記録の目的に関するヒアリング調査を行った.勉強会前のヒアリング調査から介護記録の目的として考えられていた内容は≪情報共有≫≪介助の向上≫≪リスク管理≫≪家族への責任≫≪申し送り≫≪連携≫≪義務としての記録≫の7つのカテゴリーが抽出された.勉強会前のヒアリング調査をもとに,介護記録の目的,書き方,SOAP記録の意義,書き方に関しての勉強会を行った.勉強会後に行ったヒアリング調査では,≪情報共有≫≪リスク管理≫≪連携≫≪仕事の一環≫≪活用方法の変化≫のカテゴリーが抽出された.≪情報共有≫≪リスク管理≫≪連携≫では,大きな意識の変化は見られなかったが,≪仕事の一環≫≪活用方法の変化≫において,≪義務としての記録≫の意識から≪仕事の一環≫としての意識の変化が見られた.勉強会の実施を通して介護記録,介護に関しての意識が向上したことで介護の質の向上が図られたと考える.

  • ―小学校教師向けの調査結果を分析して―
    石井 雅幸, 塚本 美紀
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 592-602
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    小学校理科授業においては,問題解決の過程を取り入れた学習を展開している.この学習過程においては,問題に対する結論を導く過程における「考察」という過程を歩む.この「考察」の過程における指導は,曖昧で子どもはもちろん教師ですら明確な指導の理念をもって行われていない現状が明らかになりつつある.そこで,改めて小学校教師は小学校理科の学習における「考察」をどのように捉え指導を行っているのかを明らかにするための教師向けの質問紙を開発し調査を行った.その結果,考察場面における指導のあり方や,考察場面では何を子どもに考えさせようとしているのかが不明確であることが分かった.今後,ここで明らかになった教師の実態を踏まえて,小学校の理科学習における「考察」場面の指導のあり方を検討したい.

  • ―岡倉天心,長尾雨山そして呉昌碩の貢献―
    松村 茂樹
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 603-609
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    ボストン美術館東洋美術展示場に掛けられている呉昌碩「与古為徒」扁額は,同美術館中国・日本美術部長であった岡倉天心が呉昌碩に依頼したものと考えられて来たが,実は,天心の友人で,当時上海在住の漢学者・長尾雨山が,隣人関係にあった呉昌碩に揮毫を依頼し,黒漆木額に仕立ててボストンの天心宛に送ったものである.この頃,雨山は,天心より,ボストン美術館鑑査委員を委嘱されており,その就任記念に,この扁額を贈ったと筆者は考えている.天心のボストン美術館における活動は高く評価されているが,その背景に呉昌碩と交流した雨山という中国の正統的学問を受け継ぐ学者の協力があったことは,これまでほとんど指摘されていない.本稿は,これを分析し,近代において画期的成果を収めた日・中・米文化交流の意義を明らかにすることを目的とする.

短報
  • 工藤 陽香, 山中 千恵美, 青江 誠一郎
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 140-145
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/10
    ジャーナル フリー

    近年,肥満の増加に伴い,併発する頻度の高い非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が着目されている.日本でのNAFLD有病率は約30%と報告されており,今後さらに増加していくと予測されている.分岐鎖アミノ酸(BCAA)は以前より骨格筋合成促進作用があるとされサプリメント等で使用されてきたが,近年脂肪蓄積抑制作用があると報告されている.そこで,食餌性肥満モデルマウスにおけるBCAAの肝臓脂質蓄積への影響について検討を行った.飼料はAIN-93G組成を基本とし,20%カゼインをコントロール(CO群), BCAA(12%ロイシン,5%バリン)を強化した群(LV群)とした.また,脂肪エネルギー比が50%となるようラードを添加し,5週齢雄のC57BL/6Jマウスに12週間給餌した.その結果,肝臓トリグリセリド蓄積量がコントロールと比較して有意に低下した.肝臓のmRNA発現を測定したところ,脂質合成系の転写調節因子であるステロール調節エレメント結合たんぱく質-1c(SREBP-1c)および脂肪酸合成酵素(FAS),および脂質分解系の転写調節因子であるペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)およびその下流のアシルCoA酸化酵素(ACOX),並びに炎症マーカーの発現に有意な差は見られなかった.しかし,酵素活性を測定した場合,CO群と比べてLV群でFAS活性について有意差は見られなかったが,ACOXではコントロールと比較してBCAA添加で有意に高値を示した.以上の結果より,ロイシンとバリンの添加によりACOXを活性化させβ酸化の活性を高めることで肝臓脂肪蓄積を抑制する可能性が示された.

  • 下田 敦子, 大澤 清二
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 610-620
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

    ミャンマー最深部に居住するカヤン人(カレン族のサブグループ,カヤン語を母語とする)女性は頸部に真鍮製のコイル状の重く長大な首輪を生涯に亘って装着し続けるという伝統を今もなお継承している.カヤン人の多くが暮らすミャンマー東部のカヤー州ディモソー地区(T村,S村,R村,P村)においては,全女性人口の10.6%が首輪を装着している(下田,2015).しかしながら,この奇習の理由ははっきりとせず,定説があるわけでもない.一方で,近代化による急激な生活様式の変化により,この習慣は徐々に消失しつつある.「人は何故,苦痛を伴ってでも身体に装飾を施すのか?」「美を装うために人は身体変工をするのか?」本研究では,この地区において「首輪を装着しているカヤン女性」「首輪を装着していないカヤン女性」「カヤン男性」という3群を設定し,首輪装着についての美醜観について聞き取り調査を行い,主成分分析により探索した.その結果,以下のことが明らかになった.
    1)首輪を装着している女性たちは自分たちの身体変工について非常に肯定的であり,美しいと意識している.
    2)首輪を装着している女性はモノとしての首輪についての負担感を持っている.

  • Atsuko Shimoda, Seiji Ohsawa
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 638-644
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/15
    ジャーナル フリー

    ミャンマーの最も奥地であるカヤー州のタイ国境に近い4つの村に,カヤン人がいる.カヤン人の女性には今もなお首輪装着という習慣が残存している.

    3kgにもなる重く,長い首輪をつけて,日常を送り,しかも生涯を通じて行っている.この奇妙な習慣を外部世界の人々は非常に奇異に感じている.では,なぜ彼女たちは首輪をつけるのか?意味するところは何か? この研究ではこの問いに答えるために,30対の対照的な言葉を用いるSD法(semantic differential method)を用いて,その意味を探索した.比較のために,首輪をつけた群,首輪をつけない群の女性群と男性群の3群にインタビューをした.その結果,首輪装着者が首輪を誇らしく,好ましく,そして美しい装飾品として身体の一部のようにイメージしていることが明らかになった.

    文化とは非常に相対的である.カヤン女性の奇習は彼女らにとって奇習ではなく,美しい身体を飾る身体の一部であるという解釈が成り立つ.

報告
  • ― 2編の小さな異郷訪問譚の接合 ―
    大喜多 紀明
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 1-13
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本稿では,スタジオジブリが製作した長編アニメーション作品『崖の上のポニョ』に関する構造分析を行った.本稿の検証によれば,当該作品は,裏返し構造により構成された2編の異郷訪問譚が接合した構造であることが確認できた.

  • 行方 衣由紀, 金澤 温子, 濵口 正悟, 田中 光, 田中 直子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 14-19
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     ミトコンドリア機能はエネルギー代謝の制御に中心的役割を果たしており,生活習慣病の発生・予防とも深く関連している.我々は蛍光イメージング法と透過性を高めた心筋由来H9c2細胞株を用いてミトコンドリアのpermeability transition pore の開口を観測する方法を確立した.細胞にcalceinを負荷し,digitonin 処置により細胞膜の透過性を高めたH9c2細胞において,calcein の蛍光はミトコンドリアマーカーであるtetramethylrhodamine ethylester の蛍光と局在が一致した.ミトコンドリア外液のCa2+濃度を上昇は,ミトコンドリア内Ca2+濃度を上昇させ,calcein 蛍光を減少させた.この減少はpermeability transition pore 阻害薬cyclosporin A により抑制された.また,ミトコンドリアuniporter 阻害薬のruthenium red により減弱し,ミトコンドリアNa+-Ca2+交換機構阻害作用を有するdiltiazem により増強された.本研究で確立した蛍光イメージングによる解析法は,生理的条件下および各種生活習慣病の病態下でのミトコンドリア機能制御の研究に有用である.

  • -個性を重視した高等教育の実現に向けて-
    川合 宏之
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 20-25
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     わが国の教育行政は個人の尊厳を尊重するという理念のもと行われている.しかし,少子化・大学生の学力低下・意欲低下という決して明るくない教育の現状があるのも事実である.本稿は,その背景となる事情を明らかにし,高校から大学へ環境が変わることによる学生の学びの危機を問題として提示する.そして,リメディアル教育・初年次教育の視点から先行研究を整理し,まだ検討されていない課題について明らかにするものである.

  • ― 犬の主たる飼育者とペットの非飼育者の比較 ―
    早川 洋子, 荒尾 孝
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 47-56
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     犬の主たる飼育者とペットの非飼育者を対象に,犬の飼育と健康関連 QOL の3 側面(身体的,精神的,社会/役割的)の健康状態との関係を明らかにすることを目的とした.成人を対象としてインターネットにより,健康関連 quality of life (QOL)(MOS 36-Item Short-Form Health Survey : SF36)と生活習慣(運動習慣,食習慣,飲酒,喫煙),学歴などの調査を行った.加えて,犬の主たる飼育者には,犬の飼育に関する質問の調査を行った.その結果,犬の主たる飼育者は,ペットの非飼育者に比べて,健康関連QOL のうち身体的及び役割/社会的な健康関連QOL が有意に高く,その背景として犬との散歩による身体活動量が多いことが関係しているものと推察された.

  • ―The necessity of technical guidance for hairdressing instructors―
    Seiji Kawano, Kimiko Yui, Keiko Endo, Hiromi Kato, Rumi Akita, Cho Chi ...
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 57-62
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     Currently, the focus of the hairdressing industry is quality, and the highest priority is customer satisfaction with the need to provide the highest levels of technical skill and hospitality. Also, because the hairdressing industry, a service industry, is based on personal interactions, education has become a vital issue for the improvement of the industry’s quality. I believe that it is necessary to continually develop high quality education where hairdressing training takes place. My studies have been on the necessary means for this continuation.

     Of the expected abilities of educators in hairdressing training, the ability to provide instruction and to evaluate education is important. The educator must be able to judge the effectiveness of the education and instruction quickly, to determine how a given learner should be instructed, and to put in place appropriate education and instruction.

     To this end, how to evaluate the motivation, attitude, and ability of inexperienced or unskilled learners for technical mastery is important. From such evaluations, it will be possible to encourage the learner’s self-development to cultivate adaptability and creativity. But based on data analysis from technical evaluations, it will also be important to give clear instruction regarding the next learning goal for each learner and to create opportunities to improve motivation for learning. Based on this viewpoint, I developed an original technical evaluation system. The next step will be to improve this system.

     The transfer of hairdressing skills and techniques is essentially through hand labor. As times change and the environment of the hairdressing industry changes dramatically, it is necessary for educators to work actively on adaptable hairdressing education and instruction that can respond to the changes in character and temperament of learners born and raised in the times. For this, instructing methods also need to evolve continually. Finally, I studied the necessity of technical guidelines for hairdressing education and hairdressing work. From this study, I plan to continue this work with the expectation that a new way of instruction will emerge.

  • ― On the psychological interaction between the “Teaching side” and “Learning side” in the teaching methodology of hairdressing techniques ―
    Seiji Kawano, Ayami Kuroda
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 63-74
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     To establish a teaching methodology for hairdressing techniques and to improve training for hairdressers, I studied the psychological interaction between the "teaching side" and the "learning side". Firstly, I looked at evaluation ability, one of the skills of the essential teaching quality of leadership, and considered it from both the teaching side and the learning side. Secondly, I divided the learning side into three levels according to winding ability and asked each about the psychological demands placed on them and about the teaching methodology. Finally, I considered the need for students to study psychological interactions before entering the hairdressing industry.

  • ― 「手づくり」のすすめ―
    桐原 美保, 下坂 智惠
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 75-85
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本研究は,学生が「手づくり」を通して,主体的に,生涯学び続ける意欲を持つことを念頭に,福祉分野における家政学教育のあり方について示唆することを目的とした.

     衣生活領域においては,2005年に実施したアンケート調査の結果,「手づくり」に関する技法はある程度習熟するまで継続しないと忘れることや,材料に触れることにより衣服の素材に対して関心を持つことなどがわかった.本報では,このアンケート結果をもとに,福祉分野における授業内容を検討した.その結果,学生は授業で製作した知育玩具などを幼児施設等の実習先において利用するなどの成果が見られた.

     食生活領域においては,本学の学生を対象にアンケート調査を行い,従来から踏襲されてきた調理技術に対する意識,調理技術の習得法などを調べ,今後の食生活領域における授業の方向性を探ろうとした.調理技術の基礎知識を知りたいとする割合が高く,自分で料理を作りたいという意識のあることが示唆された.そこで,生活の自立に必要な基礎的な知識及び技術を習得すること,基礎的な日常食の調理ができることを目標として実習内容を検討した.

  • 河野 誠二
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 86-89
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     美容実習系の教育担当者に期待される能力とはどのようなものだろうか.

     美容室と教育の場での体験を顧みて考察する.

     美容実習系教育担当者の能力は,教育・指導の評価能力がより重要であるといえる.ある段階で教育・指導の効果がどの程度「ある」のか「ない」のかの判断を下すことができなければ,次の段階の教育・指導ができない.その時々の教育・指導の効果を瞬時に判断しつつ対象者個々の次のテーマを見抜き,適切な教育・指導をしなければならない.

     このような能力は,実習の場においてどれほど実践的な技術指導経験を積むかに左右される.しかし,実習の場で客観的な見地からより具体的な情報の収集をすることによって,「効果あり」「効果なし」の判断をつけられるようになる.

     まずは,学生の評価・成績があがるような効果ある教育・指導は何かということを追及することから始める.

     それには,効果をどのように判断するかという評価基準が重要なポイントになる.これはあくまでも科学的な根拠で裏づけされていなければならない.そのためには,可能な限り継続的に数字で示す必要がある.そうして,その数字が示す理由について明確に解説し,学生たちの目標を明確にさせる能力が必要である.そのような能力を高めなければならない.美容実習教育担当者は,「教育・指導の効果」についての責任を持つことでその責任を全うすることができるのである.

  • ―その現状と問題点・解決方法―
    河野 誠二
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 90-93
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     良い指導は働く教職員の共通の願いである.しかし,ともすると,そのようになっていないのが現実である.また,どうすれば良い指導になるかさえも分からないことがよくある.なによりもこの指導の充実を待ちかねているのは受講生である.

     この論文ではどのようにすれば指導が充実できるか,また,良い指導とはどんなことをいうのかについて考えることにしたい.

  • ― 生涯学び続ける技能の継承 ―
    桐原 美保, 下坂 智惠
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 94-104
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本報は,学生が福祉分野での生活支援に必要な知識や技術について学ぶとともに,「手づくり」を通して,主体的な学修の体験を重ね,生涯学び続ける意欲を持つことを念頭に,福祉分野における家政学教育に求められる教育内容のあり方について検討を行った.

     衣生活領域では,学生が実習先や福祉(介護・児童施設など)現場での直接的利用を目的として作品を製作した.授業を通して学生の技術は確実に上達し,自分の力で作品を製作することができ,福祉の現場に利用できた.食生活領域においては,日常食の調理において,喫食者にとって優しく食べやすくなるように工夫した料理例について検討した.その結果,料理を作る楽しさを知った.家でも料理をしてみようと感じた.料理を通して人を幸せにしたい.上手になって両親に食べさせたいなどの意見が得られ成果が認められた.福祉分野における大妻らしい家政学教育は,学生にとって生涯継続する技能を修得できる必要不可欠な科目であるといえる.

  • ―全国の学校の先生との共同の取り組み―
    生田 茂, 石飛 了一, 田上 幸太, 根本 文雄, 山下 さつき, 相川 智子, 永瀬 揚子, 五月女 智子, 高原 いずみ, 金指 葉子 ...
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 105-120
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     株式会社リコーの開発した「描いた絵が動き出す『紙アプリ』を用いた教育実践」を,全国の5つの通常学校,6つの特別支援学校,1つの保育園,1つの放課後キッズクラブで行った.学校の授業の一環として,展覧会や作品展や文化祭で,休み時間に,そして,放課後に取り組まれた.今回用いたアプリは,描いた絵が海の生き物のように自由に泳ぎ回る「紙アクアリウム」と描いた絵がコースを走りレースを繰り広げる「激闘!紙レーサー」であり,いずれも児童生徒が描いた絵の形や色を解析して,その動きや速さが変わるように設計されている.「紙アクアリウム」においては,本来の水族館としての利用の他に,展覧会の舞台背景としての利用や児童生徒の劇の発表の背景表示として利用された.参加した児童生徒は,ある時は競い合いながら,ある時は協働しながら,描く絵の形や色を工夫しながら,楽しく取り組むことができた.知的障害や肢体不自由を持つ児童生徒が通う特別支援学校においても,学校ごとに取り組む上での課題を明らかにしながら,児童生徒が楽しみながら,そして,助け合い,工夫しながら協働する活動として取り組むことができた.いずれの学校においても,絵を描くことが苦手な児童生徒も,「絵の良し悪しだけでは勝負や動きが決まらない紙アプリ」を用いた本実践活動に積極的に関わることができ,絵を描くことの楽しさを味合うことができた.学校の全てのクラスの図工の授業で取り組んだところや劇の発表の背景表示として利用したところもあり,本「紙アプリ」の教育上の価値を再認識する取り組みとなった.

  • ―四季部と恋部を中心に―
    柏木 由夫
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 121-133
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     まず,崇徳院の『久安百首』春部末尾の独自性を指摘した.次に四季部を中心に彼の和歌の特徴的要素を“和歌の用語と手段”の面から3点,“和歌の方向性(心の在処)”の面から5点を指摘し,後者の要素は連環する崇徳院の心の世界を示すと考えた.次に恋部は,恋の進行に従った構成に,和漢の知識に拠る恋歌を添えたとした.一般的恋歌から外れた身勝手さや,強引さ,あるいは卑屈さの裏にある孤独などが読み取れるとした.恋の進行の末尾歌を俊成が改訂した本文が『百人一首』に入ったとした.

  • 本郷 健, 米山 泰夫, 永井 克昇, 本村 猛能, 山本 利一, 齋藤 実
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 134-139
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,高等学校の共通教科「情報科」の目標,言い換えると本教科を学ぶことによって形成されるべき資質・能力は何かを,伝統的な教科である数学や理科の目標形成を視野に入ながら,新たに提案することにある.われわれの基本的な主張は,情報科の目標を「情報を軸としてさまざまな事象を捉えようとする見方や考え方の育成」と捉え,「情報的な見方・考え方の育成」を情報科で目指すべきことを提案するものである.先の目的を達成するために「情報的な見方・考え方」とは何かについて,一つの形を提示し,そのカリキュラムを提案することにある.具体的には,「情報的な見方・考え方」は認識科学的な側面と設計科学的な側面から構成されることを確認し,その下位に位置する10 の中心概念を提案した.

  • 生田 茂, 石飛 了一, 根本 文雄, 山下 さつき, 富山 仁子, 五月女 智子, 原 伸夫, 漆畑 千帆
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 156-204
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     著者らは,「音声や動画などのマルチメディアを再生するドットコードと音声ペンの技術」「テキストをハイライトしながら同期を取って読み上げを行う電子書籍の技術」などを用いて,特別支援学校や通常学校の先生ともに,手作り教材を制作し,教育実践を行なっている.10 年ほど前に,「児童生徒一人ひとりの困り感の軽減」を目指して,筑波大学附属学校教育局時代に始めた取り組みは,今や国内の 150 名近い学校の先生が参加する一大プロジェクトとなっている.児童生徒一人ひとりは,それぞれ異なるニーズや要望を持ち,そして,異なる学びの履歴を持っている.A さんに有用な教材や教具が,必ずしも B さんに有用とは限らない.まさに,一人ひとりの児童生徒に対応した教材や教具が不可欠な所以である.本論文では,プロジェクトの展開にとって不可欠な,著者らも開発に協力して取り組んでいる,日本発のドットコードや電子書籍のコンテンツの制作のためのソフトウエアの最新の開発状況を報告する.そして,全国の 20 校の特別支援学校の先生などが,自分のクラスの一人ひとりの児童生徒の抱える課題や困り感に寄り添いながら,その困難の軽減や解決を目指して制作した手作り教材と教育実践について紹介する.本論文で紹介した実践事例は,特別支援学校に通う児童生徒の教育活動だけでなく,通常学校の特別支援学級や困り感を抱える児童生徒のための合理的な配慮に基づく教材や教具の開発を行う上で,極めて有用な指針を与えるものである.

  • ―ハワイ先住民が綴った19世紀末の日本―
    古川 敏明
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 205-209
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本報告はハワイ語新聞に関する調査の3年目の研究成果として, 19世紀末に日本に滞在していたハワイ先住民, デイヴィッド・ケアヴェアマヒによる旅行記を紹介する. ケアヴェアマヒによる旅行記は, ハワイ語新聞で複数の記事に分割され, 「日本からの手紙」として掲載されていた. この旅行記を分析することで, 19世紀末におけるハワイ・日本間の人の移動について, 日本からハワイへの移民と比べて, これまで注目されてこなかったハワイから日本への人の移動に関する興味深い事実が明らかになった.

  • ―学生が作成した献立の実態と課題―
    蓮見 美代子, 鎌田 久子, 相川 りゑ子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 213-220
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     栄養士養成課程1年生の女子学生157名が,給食管理実習Ⅰ(2012年7月中旬)および給食管理実習Ⅱ(2013年1月中旬)において課題献立として提出した459献立を分析対象とし,栄養量と食品群別重量などを分析して課題を探り,献立作成能力の向上につながる教育内容を検討した.

     エネルギー量の平均値は給与栄養目標量に近いほぼ適正値で,エネルギー量が給与栄養目標量の±10%範囲の献立は83.0%であった.カルシウム量の平均値は給与栄養目標量より高く,給与栄養目標量の50%を超えた献立は13.1%であった.鉄量の平均値は給与栄養目標量より高く,給与栄養目標量の50%を超えた献立は27.7%であった.食物繊維量の平均値は給与栄養目標量より高かったが,給与栄養目標量の50%を超えた献立は11.1%であった.食塩相当量の給与栄養目標量±10%範囲の献立は3割で,7割の献立は給与栄養目標量に調整できていなかった.

     カルシウム量,鉄量,食物繊維量の給与栄養目標量の50%を超えた献立は,食品の使用量が一人分の料理に使用する食品の適量を超えていた.カルシウム量を高める原因となった食品は,「ごま」「ほしひじき」「カットわかめ」,鉄量は「ほしひじき」,「ほうれんそう」,「あさり」,食物繊維量は「ほしひじき」,「乾しいたけ」,「カットわかめ」であった.

     本研究から,献立作成能力の向上には,料理の一人分の適量,食品の一つ分の重量,カルシウム・鉄・食物繊維を多く含有する食品の種類,乾物や粉製品などの重量,乾物の戻し倍率,料理の適正な調味割合の理解を促す教育の強化が必要であることが示唆された.

  • ―その歴史的背景をさぐる―
    安倍 希美
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 221-234
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     小鹿野歌舞伎には三番叟があり,明治期に興った「大和座」の型が伝えられているとのことであるが,上演する部会により演技が異なる.そこで,文献調査,現地調査により小鹿野歌舞伎三番叟の歴史的背景,現在の状況を調べた.その結果以下のことが判った.大和座は,興行では常態的に幕開けに三番叟を演じていた,他の地芝居で三番叟の指導もしていた等,歴史的に三番叟との関係が深かった.上飯田部会の三番叟は,世襲により100年以上,継続的な上演の歴史を有していた.他の部会では昭和の終盤から一時中断していたが,三枝健市氏の指導が契機となり平成に復活し,現在に至っている.三枝健市氏は「大和座」の家系の人物で,若い頃自ら三番叟を演じていた.大和座は音羽屋系統三代目に該当するが,江戸末期の初代音羽屋から三番叟を演じ,三番叟には型と自由裁量部分が存在していた.

  • ―海外の研究者との共同の取り組み―
    生田 茂
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 235-244
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     著者は,特別支援学校や通常学校の先生とともに,一人ひとりの児童生徒の困り感の軽減を目指し,マルチメディアを扱うことのできるドットコードを用いた手作り教材の開発と教育実践,テキストをハイライトし同期を取って読み上げを行う Media Overlays 機能を有する電子書籍の開発と教育実践,Augmented Reality(拡張現実)を用いた教材の開発と教育実践を行なっている.この手作り教材の制作と教育実践の取り組みは,国内の 150 近い学校やオマーンや米国の学校の先生や研究者との共同の活動へと発展している.今回,これまでのオマーンの学校の先生との取り組みを発展させるとともに,新たに,中国,韓国の研究者や学校の先生との共同の取り組みを開始することができた.障害者の権利に関する条約に基づき,障害のある児童生徒や学習に困難を抱える児童生徒が十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基盤となる環境整備が焦眉の急となっており,本研究は,日本発の技術を用いた国内の学校の先生との共同の取り組みの成果を,海外の学校における児童生徒の教育の課題に資するものである.

  • ―宮崎作品にみられる特徴―
    大喜多 紀明
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 251-258
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     宮崎作品に共通する表現上の特徴を検証することが,なぜ宮崎作品に人気があるかを解明するに資するとの考えに基づき,本稿では,宮崎駿の短編アニメーション作品『On Your Mark』を裏返し構造の観点から分析した.それによれば,当該作品は短編であるにもかかわらず,6対の対応を持つ裏返し構造からなることが見いだされた.これを,すでに裏返し構造の観点から議論されている他のいくつかの宮崎作品の場合と比較したところ,対応数に関しては同等程度であることがわかった.かかる結果がもたらされる理由に対し,本稿では,『On Your Mark』の個別的特徴に由来するとする仮説,および,宮崎の作品製作上の特徴に由来するとする仮説を提示した.

  • -心理学教育を通した社会人基礎力の育成-
    西河 正行, 八城 薫, 向井 敦子, 古田 雅明, 香月 菜々子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 259-268
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本稿は,大妻女子大学人間関係学部人間関係学科社会・臨床心理学専攻の「『キャリア心理学セミナー』に関する授業研究」の第4 報である.同セミナーは,2009 年度のFD 活動の結果,必修科目として設置されることが決まり,2012 年度から大妻女子大学の研究助成を受けて授業研究を開始した.本稿では,同専攻3 年生に対して2015 年度後期に初めて実施した授業の概要とその意義について報告する.

     半期の授業は3 期に分けられる.Ⅰ期は,キャリア形成の自覚を高めることを目的とした.Ⅱ期は,マナー講習,業界・企業研究など,社会人になるための準備教育を行うこと,および,その実践として学生たち自身が卒業生に対してインタビュー調査を実施することを企図した.Ⅲ期はインタビューと,インタビューで得られた情報の整理,調査結果の発表を行い,それを通して自らのキャリアを考える機会とした.学生には,本セミナー終了後に,自らを振り返らせるために個人レポートの提出を求めた.その後,報告会で配布された資料を冊子としてまとめ,学生に配布した.

     最後に,学生のアイデンティティ形成をサポートすることを目的とした本セミナーの意義を検討した.

  • ―平成28年度の「灰干しがつなぐ地域再生ネットワーク」の展開―
    干川 剛史
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 270-285
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本稿では,宮城県気仙沼市・南三陸町,鹿児島県屋久島町・口永良部島,宮崎県都城市・高原町,熊本県南阿蘇村の間で展開されている「灰干しがつなぐ地域再生ネットワーク」を事例として,参与観察(ワークショップの開催及び宣伝販売 等)や聞き取り調査による現地調査及び文献・資料の分析・考察を通じて,「地域連携デジタル・ネットワーキング」(災害被災地や不利件利地域が相互にデジタル・メディアを活用して連携し展開する地域再生の取り組み)の実態と課題を明らかにする.

     そこで,まず,1.東日本大震災被災地の南三陸町「福興市」での「桜島灰干し」と「熟成たかはる灰干し」の宣伝販売による参与観察の結果から灰干しのブランド化の課題を考察する.次に,2.参与観察に基づいて「気仙沼灰干しの会」による「気仙沼フカの灰干し」(仮称)の商品化・事業化の現状と課題を明らかにする.他方で,3.「平成28年 熊本地震」を契機に被災地の南阿蘇村において始まった復興支援としての灰干しづくりの可能性を参与観察に基づいて明らかにする.そして,4.東日本大震災被災地と連携しながら火山災害被災地(高原町・口永良部島)で展開する「灰干しがつなぐ地域再生ネットワーク」の実態をとらえ,5.このネットワークの関係構造を「デジタル・ネットワーキング・モデル」によって描き出した上で,今後の研究課題を提示する.

  • ―補充教育および教師教育を中心に―
    森岡 修一
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 286-295
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     当論稿は,ロシアにおける教育改革の形成過程に焦点を当て,その経験的事例から主として教師教育と補充教育との関連性について考察したものである.本稿のねらいとするところは,教育における専門的発達の質的アセスメントの理解に対する多様なアプローチを分析する点にあり,補充専門教育の諸機関・施設における質的マネージメント・システムの発達過程の具体的事象を明らかにすること,さらには当該システムにおける主要なプロセスを提示することを企図した.現代ロシアの連続した教育システムの政策的実施過程において,増大する教育関連資格の優先的システムの諸相を検討することも当論稿の主要課題である.

  • ―文学研究の立場から―
    五味渕 典嗣
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 299-308
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     東日本大震災・東京電力福島第一原発事故以後,日本語の文学研究・文学批評の場面でも,核や原爆を描いた過去の作品の読み直しがさまざまに進められている.しかし一方で,「ヒロシマ」「ナガサキ」という符牒と同様,カタカナで「フクシマ」と表記された記号のもとに,現時点でどのような言葉やイメージが呼び集められているか,という検討は決して十分ではない.日本政府は2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて,震災と原発事故を乗り越えた「復興」という名 の「国民の物語」を作り上げようとしているが,まさにそれは,被災者や地域のとまどいを端折るような事態ではないか.本稿では,福島県浜通りにおいて,地域社会として震災以前・以後の記録と記憶をどのように保全し,それらをどのように表象・表現しようとしているか,まさにその現場での試みや企てに触れる中で,文学研究者として考えたことを述べたものである.

  • ―RDIによるコンサルテーションの事例検討―
    高橋 ゆう子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 309-315
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,RDI(対人関係発達指導法)のコンサルテーションによる,自閉症スペクトラム児の母親に対する養育支援のあり方について,事例を通して検討することである.対象となったのは,小1の男児の母親で,約1年間に18回のコンサルテーションが行われた.分析の対象は,その際に提出された親子のやりとりの映像,35のビデオクリップに対する,母親の振り返り(リフレクション)とコンサルタントのコメントである.それぞれ前期と後期に分けて比較し,変容の特徴を抽 出した.

     結果は次の通りである.リフレクションの内容は後期になると,否定的なものが減り,自分で意欲的に取り組もうとする内容が増えた.また,リフレクションの対象は前期後期とも “母親” 自身 が半分を占めたが,後期では “子ども” が減って “親子関係” に関するものが増えた.以上から,母親が映像を介したコンサルテーションを通して,自身の関わり方や子どもの見方に関する気づきが,親子の情緒的な相互交流につながったことが推測された.養育支援にあたっては,映像を活用することの重要性が示唆され,さらに安定した養育支援には,親と子,コンサルタントと親の関係システムを想定することの重要性が示唆された.

  • 武田 千夏
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 316-318
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     スイスのローザンヌ大学のビアンカマリア・フォンタナ女史は,スタール夫人は政治思想家として,父親のジャック・ネッケルの世論の考え方をそのまま踏襲したと主張した.本報告では,両者の相違を重視する.スタール夫人はフランスの近世から発達したサロンの伝統を踏襲して,女性を世論の中心に添えた点で,財務大臣の立場を反映した父親の世論とは大きく異なる.

  • ―シンガポールにおける記憶の視覚化―
    城殿 智行
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 337-342
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     シンガポールの市街中心部には,戦没者記念碑が立つ.第2次世界大戦中,シンガポールを占領した日本軍は,抗日分子の排除を企図して,5万人ともいわれる華僑を粛清していた.1962年になって,粛清された華僑犠牲者の遺骸が発掘されたのを契機とし,日本軍占領下に殺されたすべての一般市民を弔うための慰霊碑が求められ,1967年に落成した.市民による抗議運動の高まりを受けて,日本は同年にシンガポールと準賠償協定を結んだが,戦争責任を公式に認めるものではなかった.戦没者記念碑は,多民族国家シンガポールの象徴であるが,日本は今もなお,それを直視することができないでいる.

  • 青江 誠一郎
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 343-348
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     腸内細菌解析のための標準菌株の入手と検量線の作成を実施した.その結果,Bacteroides fragilis group, Prevotella属, Eubacterium属, Clostridium coccoides group, Clostridium leptum subgroup, Lactobacillus属, Bifidobacterium属,Atopobium cluster属の検量線を作成することができた.

     品種・βグルカン量が異なるもち種の大麦3種を高脂肪食飼料に配合してマウスに給餌し,盲腸内の腸内細菌叢ならびに短鎖脂肪酸量を測定した.その結果,ビフィズス菌,乳酸菌数を増加させる整腸作用は,3種のもち麦に共通であった.短鎖脂肪酸,特にプロピオン酸の産生量が多いもち麦が選出された. 2種のもち麦は,炎症性細菌であるClostridium coccoides groupを減少させた.本結果は,脂質代謝,糖代謝のメカニズムの一端を担っている可能性が示唆された.

  • ―スーパーバイザー養成研修の試みから―
    丹野 眞紀子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 349-356
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本研究は介護支援専門員の相談面接力の向上に向けてどのように研修が望ましいか,特にスーパ ーバイザー養成にどのような方法があるかについて考察している.平成28年に見直しが行われた介 護支援専門員および主任介護支援専門員の研修について概観を述べ,特に,介護支援専門員実務研 修の増加について確認した.研修時間が44時間から87時間に増えており,その内容から,相談面接 の内容を吟味した.また,気づきの事例検討会を活用したスーパービジョンを実施し,参加者から のインタビューの内容をまとめた.研修そのものはまだ回数が少なく,具体的な内容を言語化する ことが今後の課題である.また,参加者のスーパービジョンに対する理解を深めることも大事であ ることもわかった.

     最後に,オーストラリア視察で得た,高齢者の状況や在豪日本人の親の呼び寄せや高齢化した在 豪日本人の状況を報告した.長く海外で生活した人が高齢化により日本に帰国し,異文化で生活し てきた彼らを介護支援専門員がどのように受け入れ支援していくか考える必要性があることもわ かった.

  • ―ニーズ論的アプローチの今日的課題をふまえて―
    加藤 悦雄
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 549-558
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     子ども支援や子育て支援は誰に対して,どのような根拠に基づき行われていくのか.こうした問いは社会福祉原論における対象論研究に位置づけられ,これまでに問題論的アプローチ,ニーズ論的アプローチ,権利論的アプローチなどの方法が生み出されてきた.本研究の目的は,以上のような先行研究を踏まえ,ひとつは権利論的アプローチを基盤として子ども支援を展開していくことの優位性を示すということ,いまひとつは権利論的アプローチに基づく支援行動を起動させていくメカニズムを提起することである.そのための手続きとして,まず,1994年のエンゼルプラン策定以降,ニーズ論的アプローチの活用によって,子育て支援サービスの全国的な普及が促進されてきたが,他方でその一面的な活用の結果,利用者の問題にサービスを当てはめる支援,すなわちサービス本位の支援が危惧されるようになったことを指摘する.それでは,子どもの最善の利益に基づく本人主体の支援を展開していくには,どのような視点が必要となるのか.ひとつの補助線として,現在も岡村理論として影響力のある岡村重夫による福祉理論を参照していく.岡村は生活者を主体とした対象認識の方法を構築し,さらにその晩年において,こうした考え方の必然性を人権概念によって基礎づけようとした. このような岡村の提起した枠組みを用いることで,子どもの最善の利益の考え方を主軸とする,子どもの権理論的アプローチの構成要素を示していく.しかしながら,すでに1994年に子どもの権利条約が批准され,人権概念が現実のものとなったが,岡村の期待したような生活者主体の支援が展開されているとは言い難い.そこで,子どもの権利論的アプローチを起動させていく十分条件として,フロイトによる心の構造の理論を参照し,子どもの支援活動の担い手の中に価値が位置づいていくメカニズムを提起していく.

  • 桃井 克将
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 625-628
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     社会福祉士養成課程では,幅広い分野の内容を学ぶ.実際,国家試験における指定科目は19科目にも及ぶ.多様な科目を学ぶ中で,直接的に福祉とは関係性をイメージしにくい科目の一つに福祉サービスの組織と経営が挙げられる.当科目は,福祉サービス組織の成り立ちや経営理論や会計,人事管理や労務管理についても扱うため,福祉を主に学ぶ学生にとって,福祉と結びつきにくい科目になりがちである.そこで本稿では,当該科目で扱われる経営戦略や経営における交渉,お金の流れについて理解するためのアクティブラーニングの取り組みを紹介し,その意義を検討することを目的とした.質問紙調査の結果から,学生が経営学について楽しく学べたことが見受けられる. 一方で,モノポリーでの学習が有効であるとは感じているものの,経営に興味が沸いた学生が少なかった印象である.今回は経営戦略,交渉,お金の流れを理解しやすくするためボードゲームを用いたが,他の内容についても学生による主体的な学びを促進することで,学びを深めることが少なからず可能であると考えられる.

  • 陳 海涛
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 629-637
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     近年,日本語のフィラーについての研究は盛んになっている.しかし,中国語のフィラーについての研究は,断片的なもので,十分重視されていない.本稿では,コーパスを使用し,中国語指示詞系フィラー「这个」を研究対象をとし,その使用法を分類する.

  • 伊藤 みちる
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 645-653
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     大妻学院を創立した大妻コタカ先生が執筆した自叙伝『ごもくめし』は,「良妻賢母の大妻」という世評を培ってきた学院の女子教育の基本理念やその歴史が詳細に記されている. これまで『ごもくめし』は学院傘下の中学・高等学校の生徒や, 大学・大学院の学生, 保護者や教職員に読まれてきたものであり, 外国人による講読や感想の報告はない. 本稿は2016年度後期に大妻女子大学国際センターに所属していた10名の中国と韓国の留学生が,『ごもくめし』の講読を通じ, ①どのような 感想を抱いたか, ②来日前から抱いていた日本女性に対する否定的なイメージや偏見がどのような変化を遂げたのかについて記録した. さらに『ごもくめし』講読によって大妻女子大学への留学に特別な意義を見出すことができたのかについて示した. 日本女性は結婚後, 家庭に閉じこもるしかない可哀想な存在という留学生の偏見は, 『ごもくめし』に記された結婚後の女性の社会進出を支持するコタカ先生の考えにより和らいだ. そして結婚して家庭を築いてから職業婦人となったコタカ先生に敬慕を抱くと同時に, 様々な困難を乗り越えて一人の日本人女性が創立した大妻女子大学に留学したことに好意的で特別な意味を見出していた.

  • 桃井 克将
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 654-657
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本稿では,「障害児を支援する際の重要要素」と題し,学生が障害児とかかわる際に重要であると感じる事柄を「バイステックの7原則」を用いて整理し,今後の障害児保育における教授内容の一助を得ることを目的とした.結果,児童を対象とする保育士を目指す学生ならではの回答が得られ,その結果はグループごとに異なっていた.本演習で学生は,それぞれが実習で体験したことやこれまでに学習してきたことを参考に活発に議論していた.本演習は,「こうするべきだ」という 「べき論」に立った援助ではなく,それぞれの保育士によって価値観も違う中,児童のよりよい生活を目指し援助している点を,特に障害児支援に着目しながら理解させるために実施した.どうしても,理論系科目で扱われる「~の原則」といったものが出てくると,「そうしなければならない」 と型にはまってしまう.勿論,型を用いることも大切であるが,それぞれの援助者の価値観も重要視しつつ,お互いに連携しながら関わっていくことの重要であることをグループワークを通して学ぶ機会となったのではないだろうか.

  • ―章構成と法令について―
    杉山 実加
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 658-662
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     保育士養成課程の必修科目である「保育原理」では,保育の思想と歴史的変遷が教授内容に含まれているが,教授内容は具体的に規定されていない.そこで,本稿では2016年から現在まで(2017年10月時点)の間に出版された「保育原理」のテキストの記載内容を分析し,戦前の幼児教育についてどのような事項を教授内容として掲載しているかを明らかにする.まず分析の前提として戦前の幼児教育について記載されている章及び節について確認し,続いて法令に関する記載について分析を行う.

  • ―インボディと左右部位別インナースキャンとの比較―
    小林 実夏
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 670-673
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     青年期女性を対象に,インボディと左右部位別インナースキャンを用いて,体組成を測定し測定値の差を検討することによって,左右部位別インナースキャン利用の可能性について明らかにすることを目的とした.2015 年,2016 年の 10 月に O 女子大学の学生 201 人(平均年齢±標準偏差: 20.1±0.6)を対象にインボディと左右部位別インナースキャンを用いて体組成を測定した.両測定法で測定された体組成指標である体重,体脂肪率,基礎代謝量,筋肉量,BMI を比較した結果,インナースキャンとインボディで測定された体重,BMI,体脂肪率,基礎代謝量,筋肉量の相関係数はいずれも高く,順位相関係数の P 値はすべて<0.001 であった.本研究の結果,インボディの使用が難しい疫学調査のフィールドにおいて多数の対象者から体組成を測定する場合に,左右部位別インナースキャンを用いた体組成値を指標として,栄養摂取状況,生活習慣,食習慣等の要因との関連を検討することが可能であることが示唆された.

  • 竹内 知子
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 674-675
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     RNAの細胞内局在化は, 細胞の分化や極性形成を生み出す重要な現象である. 本研究では, 出芽酵母の細胞質に塊状に局在するmRNA(クローンNo. 302S)の局在化機構を解明するため, 302SのmRNAの局在化に異常を示す遺伝子破壊株をスクリーニングする系を構築した.

  • - SNS利用におけるリスク -
    市川 博, 本間 学
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 676-681
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     インターネットの普及が急速に進み,その利用人口の増加が著しい.当初は特定なコンピュータを接続するクローズなネットワークであったが,現在では不特定多数のコンピュータを接続するオープンなネットワークとなり,携帯電話や家電,コンビニのPOSシステム,銀行決済,ネットショピングなど,日常生活に必要不可欠なインフラとなっている.しかし,その利用にまつわるトラブルも頻発し,インターネット利用におけるリスクが増大している.インターネット利用における利用者個人のリスクとしては,ウイルス感染による個人情報の流出や詐欺等の被害の他,他者の権利侵害や名誉毀損などがある.これは現実社会でも同様に発生するが,インターネットの開放性とデジタル情報の特性により,伝達速度および被害の大きさ,終息処理の難しさにおいて現実社会とは大きく異なっている.本研究では,若者のインターネット利用がスマートフフォンによるSNSが中心であることから,SNS利用におけるリスク要因を明らかにするために,質問紙による調査を実施した.

  • -日本語補習授業校通学児の 2 年間の縦断的調査に基づいて-
    柴山 真琴, 高橋 登, 池上 摩希子, ビアルケ(當山) 千咲
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 682-696
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本稿では,ドイツ居住のバイリンガル小学生を対象に実施した日本語作文調査の概要と調査結果を報告した.調査では,日本語補習授業校児童に,小 4 と小 6 の 2 時点で「物語文」と「説明文」の 2つの課題で作文を書いてもらった.作文を縦断的に分析した結果,次の 2 点が明らかになった.第一に,対象児の書く力の発達過程は,文字・表記・単語/構文/談話の 3 つのレベルで,日本語モノリンガル児に比べると相対的に伸び方が緩やかで伸び幅も小さいものの,2 年間で着実に伸びていた.他方で,日本語でも複雑な文章を構成する力がついてくる反面,言語の形式的な側面や要素的な側面に揺れが見られた.第二に,対象児の談話構成力は,「物語文」作文では 2 年間で順調な伸びが見られたのに対して,「説明文」作文では 2 年間の伸びが小さいなど,作文のジャンルによって伸び方が異なっていた.今後,バイリンガル児の日本語作文力の発達過程の解明を進めるためには,日本語作文力の総合的な分析と作文ジャンル間の比較分析を通して,日本語作文力の発達過程に見られるバイリンガル児とモノリンガル児の重なりと違いをより詳細に分析する必要があると考えられた.

資料
  • 熊谷 智博
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 33-38
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     本研究では集団間紛争を解決し和解を促進する要因として,外集団に対する尊敬に注目し,それと特性としての愛着不安傾向の関係を検討した.大学生135名を対象に特性的愛着不安傾向,一般的安心感,対処能力への自信,外集団に対する尊敬に関する質問項目への回答を求めた.回帰分析結果は愛着不安傾向が一般的安心感を弱め,それが外集団尊敬を弱める事を示していた.特性としての愛着不安が集団間紛争解決に与える影響の可能性が議論された.

  • -キャリア教育と療育-
    川合 宏之
    2017 年 2017 巻 27 号 p. 150-155
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2020/04/02
    ジャーナル フリー

     近年発達障害だけでなく,多くの精神疾患が認識され始めている.特別支援が必要な生徒への療育には専門家と保護者の連携が必要となり,就労を目指す生徒には適切なキャリア教育が必要である.しかし,保護者と教員の意見の不一致や支援体制が不十分である等の課題は多い.一方,生徒の自立を目指す特別支援教育は通常教育にも通じるものがあり,職業を意識した先駆的なキャリア教育を目指す研究が行われてきている.これは,特別支援が必要な生徒の療育環境としての通常教育の可能性が示されていると考えられる.

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