2018 年 2018 巻 28 号 p. 440-445
知的特別支援学校における絵本活用(絵本の読み聞かせ)の取組の主な様子と教員のアンケート調査結果から絵本の読み聞かせが情報教育の取組として十分成立するのかについて情報活用能力の3つの観点から考察し,さらに和歌山県教育委員会(2011)の『市民性を育てる教育』の「市民性」を構成する3つの要素(自立,共生,社会参加)から成果や課題を考察した.その結果,絵本の読み聞かせでは,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力が求められるなど効果的な情報教育の取組となることが示唆された.また,子ども自ら絵本の読み聞かせをしたり,友だちから褒めてもらうことにより自尊感情を高めることができたり,読み手の問いかけに応答したり,質問したりするなど読み手の友だちとのやりとりを深めたりすることにより,自立や共生の要素にも十分寄与することが示唆された.一方で,社会参加の観点から地域に参画する視点が取組の中では弱いことが示唆された.