人間生活文化研究
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対抗的記憶とナショナリズム
五味渕 典嗣
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2018 年 2018 巻 28 号 p. 541-548

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抄録

 東日本大震災・東京電力福島第一原子力発電所事故以後,アカデミズムや社会評論の場面で,足尾銅山と鉱毒事件の記憶がしばしば想起されている.稿者は,2016年度~2017年度にかけて何度か足尾地域を訪れ,フィールド調査・聞き取り調査を行った.急激な人口減少に直面している現在の足尾では,銅山関連遺構の「世界文化遺産」登録を目指す動きも見られるが,そこには,「いま・ここ」を起点とし,過去の問題を「解決済み」として取り扱う記憶と記録の選択的な統制が作用している.本稿では,足尾の先行例として長崎県旧端島炭坑(いわゆる「軍艦島」)の観光資源化の問題と照らし合わせながら,現在の日本における「日本近代」の語り方とその問題性について検討し,日本社会における記憶の資本化がナショナリズムと密接に結びついていることを明らかにした.

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© 2018 大妻女子大学人間生活文化研究所
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