2019 年 2019 巻 29 号 p. 168-177
Happy Victimizer とは,幼児にしばしば見られる,加害者にポジティブな感情を帰属させる現象である.なぜ幼児にこの現象が生じるのかは十分にわかっていない.本研究は,5〜6 歳の子ども(N= 37,M = 72.62 ヶ月,SD = 3.72)を対象に,Happy Victimizer 現象と入り混じった感情の理解の関係を調べた.実験参加者は,非道徳場面での入り混じった感情の理解,および,Happy Victimizer 課題に回答した.Happy Victimizer 課題は,加害者の利己的な動機が強調される,または道徳的ルールが強調されるという,2種類のシナリオが用意された.その結果,入り混じった感情を理解することと道徳感情帰属に関係が見られた.さらに,入り混じった感情を理解している幼児は,道徳的ルールが強調されるシナリオにおいて加害者にネガティブな感情を帰属させる傾向が見られた.つまり,文脈と入り混じった感情理解の組み合わせ効果により,Happy Victimizer 現象が弱まることが示唆された.