2019 年 2019 巻 29 号 p. 762-767
製薬会社にとって,医療用医薬品を安定供給することは重要な責務の一つである.平時においては当然のこと,自然災害等の有事においても,供給を継続する必要がある.本稿では,D社が実施している台風・ゲリラ豪雨等に起因する冠水事案に関する対策とその効果について報告する.D社福島工場は過去に場内冠水をおこした経験のある場所に立地しており,非常時に特別な訓練を受けた人員がいなくても(薬の製造作業員や研究員だけで)対処ができることを要件とした対策を取っている.今回,数十年ぶりの豪雨災害となった2019年台風19号に直面し,工場敷地内で急激な冠水が発生したが,対策の結果として床上浸水を防止することができた.D社福島工場の対策・装備は,一般社員のみで対応できる内容であり,各所における洪水対策の参考となることが期待される.