2020 年 2020 巻 30 号 p. 392-415
2016年に遠隔教育大学を卒業した学生を対象に,大学教育の評価を中心に,2017年2~4月にアンケート調査を実施した.遠隔教育大学の学習はキャンパスベースのレギュラーコースの学生の学習と異なり,学習時間が比較的柔軟である所から,入学前から仕事を持っていた者は49.6%と多く,在学中にも就業率は上昇し,卒業の半年後では就業率は72.8%と比較的高い.
大学に進学した目的は,知識,技能の獲得,将来の昇進,将来の高位学位取得,コースの内容に興味があるなど,選択目的が明確である.入学前から仕事を持っていた者は,その仕事に関連するコースを選ぶ傾向が強い.大学の評価に関しては,講義はおおむね理解できた,教育内容は自分の関心と関連がある,教育にある程度満足している,と答えている.様々な形態の授業に関しては,インテンシブ・コースや講義の内容,質については比較的満足度が高く,有効であったと感じられている.様々な能力の開発に関しては,大学教育によってある程度は開発されているが,創造性,国際的視野に関する能力の開発程度は弱い.
このコースでの学習をどの程度友人に推薦したいかという質問は,そのコースへの全般的な満足度と同じと考えられる.回答者の属性では,性別では女性,就業状況別では継続して学習している者,入学前と同一・類似の仕事に就いている者,コース別では実用的アートコース(英語,経済学)が全般的に高い評価をしている.大学教育への評価結果との関連から見ると,大学の教育が役に立ったと感じた,自分の仕事に関係があると考えたり,推薦された,コースに興味をもって意欲をもって入学した,などがプラスに寄与し,勉強に困難を感じた事はマイナスに寄与している.