2020 年 2020 巻 30 号 p. 539-548
本研究の目的は,ネパールの村において,アクションリサーチとして「社会関与型アート」を実施し,その意義を発展途上国における芸術実践と芸術教育の視点から明らかにすることである.この村におけるアートプロジェクトは身近なところから入手できる竹素材を活用して貯水タンクを保護する小屋を作ることから始まったが,竹組みによる集会所の建設や大地震で崩れたヒンドゥー教寺院の神話的壁画制作も含めた復興といった形に発展し,村人のアートプロジェクトへの参加は新たな別のアートプロジェクトを生み出すことになった.
現地調査の大きな成果は村で栽培されているウコンを染色素材として活用することの可能性を示すことができたことである.この村では栽培しているウコンを用いて縄などに着色することは知られていたが,布を染色することは行われていなかった.ウコンによる染色技術を伝えると,村の女性グループによる絞り染めが始まった.アートプロジェクトは創造的なことにチャレンジする契機が生まれ,その経験は持続可能な発展へ向けて村人たちのエンパワーメントという点からきわめて重要だといえる.