人間生活文化研究
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報告
就学前までに定着させたい幼児の生活習慣に関して
――保育者養成校学生はどのように考えているか――
渡辺 直人
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2020 年 2020 巻 30 号 p. 575-583

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抄録

 現在,子どもの生活が懸念されている.今では昔と比較して大きく変化しており,幼児の高いスマートフォンの使用頻度,運動機能の未発達,子どもの体力低下など様々な面での変化が指摘されている.これは子どもの「生活の変化」が起きていることを表しているのではないかと考えられる.今後も社会の変化に伴い子どもの生活は変化し,生活習慣が乱れ,健康が懸念されると考えられる.子どもの規則的な基本的生活習慣の定着は喫緊の課題である.

 生活習慣はどのように定着するのか.これに関しては教育社会学の知見から説明できる.ピエール・ブルデューは文化資本を提唱した.その中でもハビトゥスに関するブルデューの主張は参考になり得よう.ハビトゥスとは「人々の日常経験において蓄積されていくが,個人にそれと自覚されない知覚・思考・行為を生み出す性向.」だという.すなわち,幼児の普段の生活を取り巻く環境が影響し,生活習慣も同様に周囲の影響から身についてゆくものであるとも説明できるのではないだろうか.

 幼児が普段過ごす場所は保育園・幼稚園であり,そこで幼児と関わる者といえば保育士・幼稚園教諭であろう.そして上述した文化資本論の考えを用いれば,保育者の意識は幼児の生活習慣の形成に大きく影響しているのではないかと考える.そこで本研究では,今後保育者を志す学生を対象に,就学前までに定着させたい幼児の生活習慣に対してどのような考えを持っているかを明らかにする.

 本研究では以下の3つの調査を行った.調査①では自由記述の質問紙調査法で問うた.レポート用紙を配布し,「就学前までに定着させたい幼児の生活習慣をあげられるだけあげてみましょう.箇条書きのような形でもいいです.」と問うた.調査②では,学生に挙げさせた各項目に関して重要性の高い順に順位をつけさせた.次に調査①で自由記述で挙がった内容の21項目にまとめた際に「重複した数の順位」と,「学生がつけた順位」をPearsonの相関分析により検討した.調査③では調査①で分類した項目を質問項目として用い自記式質問紙調査を行った.各項目で「それぞれどのくらい重要だと考えるか」と5件法で問うた.

 その結果,調査①では21項目にまとまった.その21項目はさらに7つのカテゴリー,「睡眠」4項目,「食」4項目,「衣料」3項目,「排泄」2項目,「清潔」3項目,「社会的生活習慣」3項目,「遊び・運動」2項目にまとまった.次に調査②でPearsonの相関分析を行った結果,0.68という有意な高い相関が確認できた(p < .05).調査③で適合度の検定を用い分析した結果,問2と問19を除き有意性が確認された.以上,本論の結論として,「学生が考える就学前までに定着させたい幼児の生活習慣」としては,問2と問19を除いた19項目が採択された.

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© 2020 大妻女子大学人間生活文化研究所
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