発話は考えを情報として伝達するのみならず,同時に情動を表情として表出する.感動詞(間投詞,談話標識)は,事態をどのように情動的に包み込むかを表し分ける形式であり,顔の表情やしぐさと同期しつつ,イントネーションや声色・声質によってさらに精緻に言語化される.本論では,感動詞ohとahは,事態が情動的に意義づけられることへの話し手の気づきを伝え,また相手にもその認識に気づかせようとする標識であるとみなす.発話を投げかけたり相手の発話を受け取ったりするときに,発話内容がとりわけ重要で印象的なものであると感じられれば何らかの感情が点火する.止まることのない感情のありかを常に透明にしておくことで会話参加者の親密な心理的つながりが築かれる.ohとahは肌触りの異なる情感を表す.ohは衝動的・即応的な動的感情を表すのに対して,ahは感情に浸り味わう風の均衡のとれた静的感情を表す.ahは,さらに,言語文化的に広く支持されている考えや話し手と聞き手の共有知識などの背景的想定を踏まえている.さらに言えば,oh/ahには発話の述べ方に特徴的な表情・態度が伴う.ohは<生き生きとした>熱意が添えられ,ahは<満足の体>の沈潜が加わる.この発話態度がohとahの<主張>と関わる肌合いの基調を成す.oh/ahはけっして一見した場当たり的な感情表現などではなく,場面や相手の発話によってもたらされた事態が話し手にとって際立って重要で印象深いものであるとき,それに呼応して情動が働くに値するもの,つまりは「情動的関連性」をもつものと判断され,初めてoh/ahが顕現する.oh/ahの誘因は情動的関連性の内発的あるいは誘発的気づき・気づかせである.ohについては,談話の切り出し,強意,相手の発話の情報価の際立ち,自分の認知状態の変移,相手との認知的差異,相手の発話の不適切性などが契機となる.ahについては,事態の出現の気づき(理解の成立や事態との主観的一体化),背景的想定との関連づけが関与する.以上述べた立場を論証すべく,本論では,oh/ahの根幹を成す主観性がどのようにもたらされるかの機序を探求した.先行研究では,ohとahの機能的分化が満足できるほど深く考察されてきたとは言えず,また多かれ少なかれ情報の維持・管理や認知状態の変移のような客観的な機構に焦点が当てられてきたが,本論はそこを一歩踏み超えるよう試みた.