本書は日本軍「慰安婦」制度、原爆投下、日系人強制収容など戦時暴力を題材としている。ただし当該暴力そのものを論じたものではない。そうした暴力の被害者側にいる「アジア」にルーツを持つ「北米アジア系の人々がどのように応答したのか、その多様性と複雑性を探る」ことこそ、本書が「試み」たことである。本書において最も注目すべき点は、先学が築いた「批判的比較研究」の方法論を導入し、複数の暴力を「補償是正」の範囲を広げる形で同時並列的に語ったことにある。多様な資料を用いつつ「アジア系アメリカ」の戦争記憶表象を様々な視角から論じた本書は貴重な情報と示唆に富むものである。