2021 年 2021 巻 31 号 p. 344-348
日本語文学のなかにあらわれた戦時性暴力の表象を考察する.現代日本の暴力をめぐる構造を,ジェンダーとナショナリズムという視座から検証するため,学術的背景を概観した上で,問題の所在を明らかにし,今後の見通しと課題を提起する.戦時性暴力と現在の日常との連続性,植民地公娼制度と「慰安婦」問題の連続性,戦時性暴力が「恋愛」という物語形式を通して不可視にされる文化的構造について論じ,日本語文学における「花柳小説」というジャンルがもつ問題,文学が「慰安婦」の記号をどのように扱ってきたのかという問題を整理していく.戦時性暴力をあらたなかたちで描く現代小説における批評性を展望し,今後の課題を示した.