2021 年 2021 巻 31 号 p. 325-343
我々は,日本語を継承語として学習中のバイリンガル小学生が書く日本語作文に見られる特徴をより詳細に解明するために,優勢言語が異なる小2児童(独日児と台日児)を対象に作文調査を行った.優勢言語の違いを超えて共通に見られる特徴と個別に見られる特徴に注目して分析した結果,以下の2点が明らかになった.第一に,共通点として次の3点が確認された.1)表記・文法や正書法の間違いが散見されるにも関わらず,文体を揃えたうえで書き言葉,構文や複文を使って談話を構成する力が形成されつつある.2)談話構成力については,物語作文よりも説明作文で評定平均値が高い.3)談話構成力が高い反面,説明作文では物語作文ほどに構文を使えていない.第二に,個別の違いは,MLU・副詞節使用・正書法の誤りにおいて見られたが,漢字使用や漢字表記間違いの差はほとんど見られなかった.以上から,多少の違いはあるものの,小2の段階では,優勢言語の違いが日本語作文に及ぼす影響の違いはそれほど明瞭ではなく,むしろ日本語で聞いて話せる力や日本語での活動経験が影響していることが示唆された.