近年「アートをビジネスに活かそう」というメッセージを掲げた本が多数出版されている.本報告では,近年のこの動向をまとめつつ以下の4点を指摘する.この動向の書籍では,(1)「アート」という語は基本的に価値語として用いられている.(2)「解釈は自由だ」とされる一方で,アートの文脈の豊かさも強調されている.(3)「アート」「アーティスト」に関する主張が不適切に一般化されたり,逆にことさらアートのことでもない話がアートの特徴として語られたりしている.(4)想定されている芸術形式や芸術的価値に偏りがある.最後に,この動向を大学教育に導入するさいの注意点を,対話型鑑賞教育,授業履修者数,アーティスト・イン・レジデンスの3つに関して述べる.