2016 年 5 巻 2 号 p. 27-34
間葉系幹細胞(MSC)は骨髄中で微小環境を形成し造血を支持している。また免疫を負に制御する働きを持ち,自身は共刺激分子を発現していないためアロT細胞からの攻撃を免れるといった特徴を有する。同種造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(GVHD)に対して,移植ドナーではないHLA不適合者の骨髄や臍帯血からMSCを作成し投与する試みが行われている。これまでの報告によれば,重篤な副作用はなく,ステロイド治療抵抗性急性GVHDの完全寛解率は3~5割程度,完全寛解+部分寛解率は7割程度期待できる。一方,その造血支持作用に着目して,臍帯血移植やHLAハプロタイプ一致ドナー移植においてMSCを併用する試みも行われている。評価はまだ十分定まっていないが,一部で有効性を示す結果も報告されている。いずれもよくデザインされた比較試験で副作用や有効性について検証する必要がある。