近代教育フォーラム
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教育学における経験・表象・仮想性(会長就任論文)
今井 康雄
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2001 年 10 巻 p. 1-17

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抄録

近代教育学の基本構造である世界の表象は、すでに世界との関係の一種の仮想化を含意しているが、この仮想化は「経験」によって克服可能と考えられていた。W・ベンヤミンは経験のこうした力に根本的に疑問符をつけた。彼はそれに対する積極的な対案をメディアの中での気散じに求めた。気散じにおいては,ショックを与えるような疎遠なものが外部から意識の中に進入してくるからである。現在の仮想性の状況に対する対応物として、言語の不透明性という現象が目に付くが、この現象は真正性、客観性、社会性の分裂をもたらすことになる。こうした状況においては、表象の限界を打ち破るような力は、ベンヤミンが考えたような外部からではなく、この三つの次元の衝突に求められるべきなのである。

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