近代教育フォーラム
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教育思想史の課題と方法 : 近代問題にどう接近するか(報告,フォーラム1 教育思想史の課題と方法-近代問題にどう接近するか)
原 聡介
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2001 年 10 巻 p. 19-28

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抄録

教育思想史は、方法的に固有の専門性をもつ研究領域である。教育思想史研究を必要とする今日的課題があることを確認するとともに、その方法的意味について考える。過去を記録するためでもなく、全体史(あるいは全体史をめざす社会史)のためでもなく、過去から学ぶためでもなく、未来を知るためでもなく、結局のところ、今日の教育思想の歴史的構造を解明するための方法として教育思想史を要請することをまず確認しておきたい。そのことはまた、教育思想史自体の作業を進めるために用いる方法に反転する。教育思想史研究の科学性は、過去の教育思想に真理が含まれているかどうか探すことや、特定の思想家に寄り添ってその言説の良し悪しを判定することにあるのではなく、思想を分析の単なる与件として扱うところにある。思想は歴史的脈絡の中に対象化され位置付けられなければならない。そして、われわれが問ううべき最大の脈絡は近代問題である。近代が未完成であるからでなく、完成されればされるほど解決困難となる問題の歴史的脈絡をどう取り出すか。今日の教育の思想的状況は、その矛盾的展開の果てにあることを知らなければならない。解明されるべき歴史的構造とは、このことに収斂していくことになる。それを知ることによってわれわれは今日の教育と対峙できる。

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