近代教育フォーラム
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人間形成における時間的連続性に関する一考察 : 時間意識をめぐるアドルノの思想を手がかりとして
白銀 夏樹
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2003 年 12 巻 p. 211-223

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抄録

近年の教育学理論では、発達的な時間意識や客観的な時間意識に対する反省から、経験の瞬間性に注目を集めるものが少なからず登場している。だがその一方で、発達的でもなければ客観的でもない自己形成の時間的連続性について論じられることは必ずしも多くない。本論文では、自己形成の時間的連続性を考える手がかりとしてアドルノのいう「叙事詩的時間」に注目し、音楽をモデルとしたこの時間意識に基づくことで、自己の時間的連続性を開かれたものとしてとらえる人間形成観を提起する。ひとことでいうなら、現在までの意識と無意識をあわせた人間形成の歩みを、統一的な論理ではとらえることのできない錯綜した諸経験の布置関係によって構成されているものとみなしつつ、忘却された先行の経験を喚起し新たな布置関係の要素となるものとして、後続の経験を位置づける人間形成観である。こうした一連の運動のダイナミズムとして、人間形成における「叙事詩的」連続性を論じる。

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