植物研究雑誌
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日本産ササ類(ササ亜連,アルンディナリア連,タケ亜科,イネ科)における腋芽と前出葉の芽翼の形態比較とその分類学的意義
小林幹夫
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2018 年 93 巻 5 号 p. 307-316

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抄録

日本産ササ類(タケ亜連)における腋芽と前出葉の芽翼の形状を調べ,その分類形質としての有効性を検証した.腋芽側面の全体像は,メダケ属では基部が円形で上半分が三角形の水滴形(卵形),ヤダケ属では細長く鋭く尖る錐形(披針形),ササ属では基部から膨出部にかけ左右に広がり,上半分が長三角形の長菱形(三角状菱形),スズダケ属では扁平な長卵形(狭卵形),スズザサ属では長菱形と長卵形の複合型,そしてアズマザサ属では毛筆形(三角状卵形)であった.芽翼の形状は,ササ属では各節ごとに特徴を示し,チシマザサ節では線状,アマギザサ節では腋芽中位から細く出て上方に張り出す弓状,チマキザサ節では基部付近から上端まで等幅の帯状,ミヤコザサ節では下方で細い帯状,上端部でリボン状に突出する.芽翼上の各種の毛も特定の属や種を特徴づけた.本研究結果は,腋芽と前出葉の形態的特徴が日本産ササ類各属,ササ属では各節のランクに対応する分類形質としての意義を持ち,外部形態に基づく精密な分類と同定を可能にすることを示した.

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© 2018 植物研究雑誌編集委員会
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