近代教育フォーラム
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コメニウスにおける世界の表象と教育的提示 : 図絵・修辞・身体(報告論文,コメニウスにおける世界の表象と教育的提示-図絵・修辞・身体,Forum 1)
北詰 裕子
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2006 年 15 巻 p. 1-17

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抄録

世界の表象という観点から、近代教育学の端緒として位置づけられてきたJ.A コメニウスの教育思想を再読した。彼の代表的著作である書物『世界図絵』と、そしてそれと重なる内容を持つ演劇脚本『遊戯学校』を、一七世紀的文脈に置き直しながら比較し、両者において、世界がどのように立ち現れ、いかに機能するのかを検討した。書物である『世界図絵』は、文字と図絵によって、構成された世界をあらわす。世界を読む側から切り離して提示する書物という形式は、典型的なメディアとして近代教育に継承されてきた。他方演劇である『遊戯学校』は、学校-世界の同型性と独自の人間観を前提とする。そこで世界を映し出すのは、演じ手である子どもの身体であり、なおかつ演じ手(世界を映し出す者)と観客(映し出された世界を見る者)が循環する。示される内容が、世界・人間・学校の連関により制限されるこの形式では、『世界図絵』のように、世界を切り出し、自由に書き換えることは不可能である。ここにあるのは、初期近代の分節化し組み合わせていく文字的なるものと、レトリック的発想の混在した教育の様相である。

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