2006 年 15 巻 p. 29-36
北詰論文は、知的刺激に満ちた論文である。この中で、北詰は、『世界図絵』と『遊戯学校』を、『開かれた言語の扉』を基にした絵本ヴァージョンと演劇ヴァージョンとして解釈する通説を批判し、単に絵本と演劇という方法の違いにとどまらない大きな違いが、そこで表象される「世界」をめぐって存在していることを指摘した。当時の演劇、エンブレムブックなどの文脈の中に『世界図絵』と『遊戯学校』を位置づけることにより、従来無かった新しい視角を提示した。その功績は高く評価するものであるが、北詰の視点自身が、いまだなお、「近代教育学からの評価」を完全には脱却しきれていないのではないか、というのが評者の見解である。この点について、以下論述した。