近代教育フォーラム
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遺伝子改造の倫理と教育思想(報告論文,遺伝学と教育の思想史,Forum 2)
金森 修
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2006 年 15 巻 p. 49-59

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抄録

現代遺伝学の急速な進展に従い、ここ10年ほど、従来きわめて禁忌感の強かったヒト生殖系列の遺伝子改造の是非をめぐる議論が力を増しつつある。筆者はその議論の思想的意味を拙著『遺伝子改造』のなかで探り、その過程で、遺伝子改造が倫理的・社会的に受容可能なものであるための倫理規範を特定しておいた。本稿では、その議論の骨子を確認し、それが教育思想にどの程度の反響をもちうるのかを簡単に分析した。その過程で出てきたのは、倫理的に受容可能な形で遂行されている限り、遺伝子改造は、哲学的には大きな意味をもちながらも、教育的には比較的限定的な意味しかもたないという事態の確認であった。そして同時並行的に、われわれがすでに教育のなかで日常的に行っていることは、「自然」を最終的準拠にすることは事実上できないということの確認をした。われわれは、「自然」さえをも設計的眼差しのなかで構築していくしかない、文化的存在なのである。

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