2006 年 15 巻 p. 61-70
遺伝子改造をめぐる議論を詳細に追跡し、遺伝子への介入を規制する三つの倫理的原則を提案した金森の報告は、今後の教育のあり方を考える上でも示唆に富んでいる。教育においても、遺伝学、脳科学、等の自然科学的な人間研究の成果を基盤としたテクノロジー化の傾向が強まることが予想されるからである。しかし、作用の帰結から遡及的に作用を規制しようとする金森の三原則は、特に教育の領域を考えた場合、十分とは言えない。作用の帰結が自由を棄損するか否か、(だけ)ではなく、作用そのものにおいて自由が確保されているか否かが、作用を規制する規準となるべきであろう。作用における自由、というこの規準は、教育において「自由」とは何か、「自由」に責任を負うとはどういうことか、についての考察をわれわれに求めることになる。