2011 年 20 巻 p. 23-31
本論の目的は、小野フォーラム論文の司会論文として、小野がブーバーに見出す問題圏を明示し、それらの問題を問うことの意味を明らかにすることである。そのために、まず、ブーバーと密接な交流関係のあったローゼンツヴァイクを取り上げ、二人の共通の問題関心を示す。すなわち、ドイツ啓蒙思想に裏切られ、台頭してきた民族主義に再び迫害されつつある危機認識を背景に、ドイツに住むユダヤ人がいかにユダヤ人としての生き方を選び取れるかという関心である。続いて、ローゼンツヴァイクの唱える<新しい思考>が現代思想としていかに有効であるのかを、ウィトゲンシュタインの哲学実践と比較して、考察する。