人文地理学会大会 研究発表要旨
2003年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 512
会議情報
外資系製造企業の経営的埋め込み
*Schlunze Rolf D.
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
在日欧州企業においては、異なる認識を持った欧州人経営者と日本人経営者が、会社の内外の活動をコントロールするために争いあっている。しかし、異文化経営において、互いに上手く協力し合うことができれば、現地の仕事環境、市場環境によく埋め込まれた、効率的な新しい経営を生み出すシナジー効果を出すことができると考えられる。欧州企業の欧州的経営が日本のビジネス環境に好ましい形で適応できた時、それは埋め込まれているということになる。この段階を、経営的埋め込み(managerial embeddedness)と定義する。日本文化、日本的経営は独特なものであると見られているので、欧州企業の文化的埋め込みについて調べるにも、日本的経営システムの「独特な要素」から検討するべきである。本研究のため、在日欧州製造企業96社全社に対してアンケート調査を行い、調査結果をもとに、計量分析を行った。目的は、日本における欧州企業の経営システムの埋め込みのタイプを調べること、そして、対内的、対外的適応の特徴から、各々のタイプの相違点を明らかにすることであった。クラスター分析の結果、ハイブリッド工場は2つに分類された。1つは、完全に埋め込まれているembedded hybrid工場で、その経営方式は、同産業日本企業の工場での典型的な方式に倣っており、ほとんどの方式が日本スタイルに近い。もう1つは、完全には埋め込まれていないsemi- embedded hybrid工場で、そこでは欧州人経営者が決定的な分野で経営方式を導入している。しかし、たとえsemi-embedded hybrid工場であっても、かなりの程度現地システムに適応しており、欧州企業は、在欧日本企業以上に現地、すなわち日本のビジネス環境に埋め込まれている。地理的分布を見ると、embedded工場はどちらかといえば、広く地方にも見られる。それに対して、semi-embedded工場の立地は、より適応性のある、つまり日本産業ネットワークの中でより国際化された空間を表している。本研究で議論する経営的埋め込みこそ、「変化のエージェント」がどのように空間と立地を変化させていくかを表す、地理学的研究の新しい道を開くのに有効なツールを与えてくれるであろう。
著者関連情報
© 2003 人文地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top