抄録
本研究は、(1)消費者の属性と分布特性による商店街のソフト事業活動の展開の差異を明らかにする。(2)顧客・商店街間の関係性を再構築することで、より多数の消費者を獲得できる可能性について検討する。本研究の調査対象地域は、京都市中京区西新道錦会商店街と同じく下京区松原京極商店街、およびそれぞれの商店街から500mの圏内である。本研究で用いるデータは、質問紙調査と聞き取り調査から得た。 分析の結果、以下のことが明らかとなった。1.両商店街でのソフト事業展開の差異は、(1)高年者・高齢者層人口数と密度、(2)共同住宅居住者人口数と密度などからもたらされていることが明らかとなった。西新道錦会商店街は、主要な顧客層である高年者・高齢者層などに対してソフト事業活動を行ったためスムーズに展開することができた。一方、松原京極商店街では、主要な顧客層ではない若年者・中年者層などの増加にどのような対策を講じていいのかがわからない現状である。つまり、商店街のソフト事業展開は、商圏内の消費者の属性や分布の違いによって差異が生じている。2.両商店街ともに、「顧客の地域への愛着」および「顧客と商店街の関係性」との間に有意な相関があった。また、商店街と関係性を構築しにくい顧客層であっても、地域への愛着度が強ければ商店街を利用することが明らかとなった。顧客と商店街の関係性と地域への愛着との関係の構築ができれば、若年者・中年者層や共同住宅居住者層を商店街に取り込むことができる。このようにみると、商店街が地域社会と密接に関わることで消費者の属性や分布を克服できる可能性がある。