人文地理学会大会 研究発表要旨
2005年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 402
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地図と道案内文を用いた経路探索の異文化比較
*鈴木 晃志郎
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抄録
 発表者はこれまで,日米観光案内書に含まれる地理情報(地図・道案内文)の内容分析をおこない,地理情報伝達の際に用いられる空間描写スタイルは文化的にある程度規定されており,端的には地図と道案内文の使用比率で特徴づけられることを実証した。しかし,情報を受け取って行動する利用者も同じスタイルを共有していることが確認されなければ,地理情報伝達に文化的差異があるとはいえない。本研究は,日米大学生を対象とする地図と言語(道案内文)を用いた経路探索実験をおこない,文化的差異が影響を与えているかどうかを検証した。
 日米の被験者39名は,資料(地図・言語のいずれか一方ずつ)を用いて,2度同じルートを探索し,その都度,使用した資料の有効性を7段階評価した。また,2度目の実験終了後,地図と言語の有効性を,相対評価することを求められた。経路探索の所要時間,エラーの数と併せて結果は数量化された。
 一元配置分散分析による検定の結果,日本の被験者群は米国より,相対評価で有意に地図を高く評価した。試行群ごとに日米を比較し,検定を行ったところ,言語先試行群では米国が言語を日本より有意に高く評価し,地図先試行群では日本が言語を米国より有意に低く評価した。また,日本の地図先試行群は一度目のエラーが言語先試行群より3分の1程度しかなく,二度目の言語試行における時間短縮効果も著しく少なかった。ゆえに,案内書の描写スタイルの違いと同様,実際の経路探索においても,日本人は地図の使い勝手を高く評価し,米国人は言語のそれを高く評価するという結果が確認された。
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