人文地理学会大会 研究発表要旨
2005年 人文地理学会大会 研究発表要旨
セッションID: 205
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“アワモリ・カクテル”で呑み解く“オキナワ”
沖縄「らしさ」を問う
*玉懸 慎太郎
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抄録
本研究の目的は「沖縄らしさ」の「らしさ」とは何か、この困難な概念にカクテルを題材に迫るものである。泡盛は、沖縄県内に48の酒造所があり、生産量の9割が沖縄県内で消費される、沖縄の地酒である。カクテルは、色、味、香り、ネーミングなどで、飲み手の想像力をかき立てるものでなければならない。。泡盛から生み出されるカクテルには、どのように「沖縄らしさ」が表現されているのだろうか。飲み手の心をとらえる「沖縄らしさ」とは何か。ネーミングなどを手がかりに、アワモリ・カクテルに表現された沖縄を探ってみたい。日本バーテンダー協会沖縄県支部では、1994年から毎年、「アワモリ・カクテル・コンペティション」を開催している。「アワモリ・カクテル・コンペティション」の応募要項には「トロピカル・アイランド・オキナワをテーマに沖縄らしい作品にする事」という創作上の注意が盛り込まれている。しかし、何が「沖縄らしい」ことなのかは示されておらず、コンペティションに参加するバーテンダーの解釈に委ねられることになる。今回の研究対象としたカクテルは61種類である。カクテルのネーミングには、「琉」の文字が多用されている。現在でも様々な固有名詞に使われる「琉球」の持つ想像力が実感される。他方、現在の地名である「沖縄」は、2カクテルに見られるのみである。沖縄の言葉を用いたネーミングも多く、方言の持つ力で沖縄を想起させる。そして、「島」、「太陽」、「海」、「花」、「風」、「南」といったイメージがネーミングとして用いられている。全体として「自然にあふれた南の島・沖縄」のイメージがカクテル・ネーミングから浮かび上がってくる。アワモリ・カクテルは各バーテンダーが個性的に作り上げたはずのものであるが、その中にも多くの共通点が見いだされる。それは、作り手と飲み手がイメージを共有する「ステレオタイプ化された沖縄」といえるのではないだろうか。
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