人文地理学会大会 研究発表要旨
2008年 人文地理学会大会
セッションID: 403
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第4会場
通所介護施設のサービスエリアの変化
―石川県小松市を事例として―
*亀山 玲子
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抄録
急速な高齢化の進展とそれに伴う要介護者の急増に対応するため、2000年4月に介護保険制度がスタートした。この制度の導入により、利用者の利便性が高まり、介護サービスの量的拡大・質的向上が図られることとなった。実際に介護サービス事業所数・利用者数は介護保険制度施行後、大幅に増加している。しかし、それまで行政の措置として利用者に提供されてきた介護サービス分野に、民間企業の参入や利用者本人によるサービスの選択・決定という市場原理を導入したことは、施設のサービスエリアに変化をもたらしたと考えられる。本研究では朝夕の2回、利用者を送迎する必要があることからとくにサービスエリアが狭小になると考えられる通所介護を取り上げ、介護保険制度導入後の通所介護施設のサービスエリアの変化を把握・分析するものである。しかし、サービスエリアを把握する際には各施設の利用者の居住地データが必要となるが、詳細な住所を得るのは困難である。そのため本研究では便宜的な方法として、各施設の利用者数を町単位に集計したデータを用いてサービスエリアを捉えることとした。その際、まず詳細な住所を得られた施設のみ、そのデータを用いて施設からの距離帯別利用者分布を集計し、次にその利用者住所を町単位で集計したデータを用いて同様の集計を行い、両者の距離帯別利用者分布の類似性が比較的良好であることを確認する作業を行った。施設からの距離帯別利用者分布によるサービスエリアは、施設の開設時期、立地場所、一日の利用定員数によっていくつかのパターンに分かれた。介護保険制度導入以前から開設していた施設では、都市部に立地する施設は距離減衰的に利用者が分布しているのに対し、非都市部に立地する施設は距離帯によって利用者にばらつきが見られた。これは制度導入前に、行政からの委託という形で利用者を受け入れていたことが影響していると考えられる。介護保険制度導入後に開設した施設では、開設年度が比較的早い施設は距離帯に関係なく利用者を集めていたが、開設年度が遅い施設ほど定員数が減少する傾向にあり、それに伴ってそれらの施設のサービスエリアも狭まっていた。このような施設の特性によるサービスエリアの差異は、利用者が施設を選択・決定する際にも影響してくると考えられる。
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© 2008 人文地理学会
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