人文地理学会大会 研究発表要旨
2008年 人文地理学会大会
セッションID: 508
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第5会場
ハノイ近郊の農地転用が農民に与える悪影響について
―ハノイ直轄市メッチー社トゥーリエン県の事例―
*グエン ティー ハータイン野間 晴雄
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抄録

農地転用は都市化の一側面から生じる一過程あり,社会経済発展の結果である。近年、ベトナムは年率3.05%(1995-2006)の急激な都市化を経験した。しかしながら,スプロール化が生じているのに,現状では,政府の方策は都市化を抑えることも,正しい方向への農地転用を動機付けすることも,住民を満足させることもできない。ハノイ市郊外のメッチー社(Me Tri commune)はそのような問題が顕在化する典型地域である。本稿の目的は,この地域で都市化おける農地転用の影響を評価することである。
メッチー社では2000年以降現在まで,急激な農地転用によって,農民は以下のようなさまざまな問題に直面している。次々に林立する高層建築やオフィスビルの景観とは対照的に,この地域の伝統的な生業であったブン (bun)といわれる米麺づくり,コム(com)といわれる未熟な糯米をハスの葉にくるんだハノイ名物の菓子づくりは衰退し,農民が以前の職業に取って代わる工業やサービス業での新規就業機会をみつけることは困難で,不安定で危険な仕事に従事せざるを得ない状況にある。さらに立ち退きによって得た補償金で,農民はこぞって所得に不似合いな高価な家を購入し,モーターバイクや携帯電話を所有するようになった。
農地転用における望ましい方法としてわれわれは以下の4点を提起したい。1) 農民に 一時的な補償金ではなく,代替の土地を与える,2) 職業訓練コースのため受講料の支給ではなくの受講証を発行すること, 3) 農地転用や廃止の前に労働の移転計画を考える, 4) 仕事を与えるのみならず,伝統的な生業が可能な場所を農民のために確保する。

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