人文地理学会大会 研究発表要旨
2008年 人文地理学会大会
セッションID: 507
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第5会場
ドバイにおける都市開発の特性と持続可能性
*山下 博樹
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抄録

1.はじめに  アラブ首長国連邦のドバイは,近年の急速かつ特徴的な都市開発と人口増加,とりわけ世界の富裕層らを対象としたリゾート開発によって日本でもしばしば取り上げられ,注目を集めている。一見,奇抜とも思える数々の都市開発プロジェクトは,他都市の追従を許さないドバイのユニークな魅力となっている。
 他方,こうした都市開発はいわゆるバブル経済の賜物であり,長続きはしないのではないかという指摘は現地でも耳にすることが出来る。また,急速な都市開発と人口増加によってさまざまな問題も出現し始めている。
 本報告では,かかるドバイの都市開発の特徴とその方向性などから都市としての持続可能性,住み良さなどについて検討してみたい。
2.ドバイの都市開発
 今日のドバイの経済発展の基盤となっているのがいくつもの経済特区である。中東最大規模の港湾に隣接し,1985年にオープンしたジャバル・アリー・フリーゾーンには国内外約6,000の企業が進出しているほか,航空関係企業,IT関係企業,報道期間,中古車業者などをそれぞれ専門にした特徴的な経済特区も設置されている。こうした経済特区の特徴は,_丸1_外資100%の会社設立が可能,_丸2_現地スポンサーが不要,_丸3_資本・利益の100%本国送金が可能,_丸5_外国人労働者雇用の制限がない,などである。
 また,交通拠点として西郊のジュメイラ地区には経済特区の拠点となるジャバル・アリー港のほか,首長国第2の空港の建設も予定されている。ドバイの代表的な大規模プロジェクトなどは表1に示したように,観光や商業施設のほか,住居としても利用されるものが多い。住居の多くは富裕層の別荘や投資目的で購入されているものも多く,現在の都市開発がバブル経済によるものだとの指摘の原因にもなっている。
3.ドバイ都市開発の持続可能性
 急速に発展したドバイには現在その歪みとも言うべき様々な都市問題が発現している。そうした諸問題に対する首長国の取り組みは次のようになっている。
 乾燥地に位置するドバイが,100万人を超える人口を維持する上での最大の課題は水や食糧の供給であるが,水は海水の淡水化や安価なミネラルウォーターによって,また食糧は農業が活発な隣国オマーンなどからの輸入によって賄われている。
 また,急速な人口増加に対するインフラの整備は万全とは言えない。とりわけ現在市内の公共交通はバスとタクシーのほか,アブラと呼ばれるクリークを往来する渡し船であり,自家用車依存により市内は交通渋滞が顕著である。その解決策として橋の増設や有料ゲートの設置,さらに2005年からは中心市街地と西郊,空港を結ぶドバイ・メトロの建設が進められている。
 都市としての住み良さ向上のポイントとして首長国政府が重視している点のひとつにイスラム教の信仰の保証がある。とりわけ夏季の酷暑のなかモスクへの移動負担を軽減するために,現在市街地では500m毎にモスクの建設が進められている。
 以上のように,近年世界的に注目を集めているドバイであるが,その都市開発の特徴は他の欧米日の諸都市には比較可能な都市が見当たらない独特のものであり,またリバブル・シティとしても住み良さに対する独自の価値基準がもたれているなど,都市地理学の研究対象としても当面は目の離せない都市であろう。
 本研究を行うにあたり2008年度科学研究費補助金基盤研究(C)「我が国におけるリバブル・シティ形成のための市街地再整備に関する地理学的研究」(研究代表者 山下博樹)の一部を使用した。

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© 2008 人文地理学会
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