抄録
1990年代後半以降の日本の大都市圏においては,戦
後の長期的なトレンドが反転し,人口の都心回帰,中
心都市への通勤率の低下などが顕著になった。この変
化を考える際には,90年代初めまでの大都市圏のシス
テムが,いつ,どのように形成されたかを検討する必
要がある。筆者は,戦前の大都市(圏)と高度成長期
以降の大都市圏とではかなりの違いがあり,その違い
は戦時期から復興期にかけての経済統制や占領政策に
よって形成された部分が大きいと考える。これはいわ
ゆる「総力戦体制論」につながるものであるが,当時
の大都市圏の変動はあまりにも激しく,変化の全貌は
十分に明らかとなっていない。本発表では,制度面と
して土地所有,通勤手当,都市計画,労務動員,実態
面としては通勤流動,人口分布変動に注目して,当時
の大都市圏の変化とその含意を検討する。