比較文学
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論文
A Japanese Adaptation of “The Raven” Hagiwara and Poe
月村 麗子
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1973 年 16 巻 p. 158-146

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抄録

 萩原朔太郎は自作詩、「鶏」をポーの詩、「大鴉」の“翻案”と呼んでいる。ポーがその中に「大鴉」のデザインを自ら明かしてみせる「創作哲学」に照らして、「鶏」の構成を、九つの点、一、長さ、二、趣意、三、情調、四、繰返し句、五、場所と時間、六、主題、七、クライマックスでの音韻効果、八、雰囲気の変化、九、終りにおける象徴性、について比較分析してみると、「鶏」はポーのデザインに全面的に一致するものではないが、大筋はそれに従っていることがわかる。恐らく、朔太郎は遠くに鶏鳴を聞き、「創作哲学」を審美上の指針として、「鶏」を作成したのであろぅ。だが、この“翻案詩”において、朔太郎は、日本の詩の伝統に育った詩人としての自己の特性を、放棄することはなかったのである。(ミネソタ大学)

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© 1973 日本比較文学会
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