抄録
個体レベルで生物の体の大きさとエネルギー代謝速度の関係(代謝スケーリング)を探る比較生理研究の歴史は古く,生理,薬理,農,水産そして生態学など様々な学問分野で基礎をなしてきた。近年,個体レベルの代謝則(クレイバー則)を個体群,群集,そして生態系レベルまで当てはめて横断的に展開する代謝生態論が注目されつつある。本稿では,代謝生態論の基礎である個体レベルの代謝スケーリングについてその理論的枠組みと,実証研究から明らかとなった生態学的意義を述べる。最後に,個体から生態系へとスケールアップする新しい代謝スケーリング研究の動向と展望について紹介する。